**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第984回配信分2023年03月06日発行 盛り上がるWBCだが 〜侍ジャパンは優勝できるか!?〜 **************************************************** <はじめに> ・ご存じのようにこの3月9日からWBCが開幕する。戦いの前に非常に盛り上 がっているように感じるが、果たして日本は優勝できるだろうか? 過去の第 1回、第2回は優勝できたが、それは当時アメリカなどの主要な国が本気でや らなかったからだ。確か、記憶があいまいだが、第1回のアメリカチームはほ とんどの選手が大学生だったはずだ。今回と違い、メジャーの選手はほとんど いなかった。時期の問題もあったのだろうが、本家アメリカはこの大会をほと んど重要視していなかった。遠い国での遊びくらいにバカにしていたと言って もいいだろう。選手も観光半分の物見遊山で来た選手が多かったのではなかろ うか。ところが、近年この大会の位置づけが変わったようだ。今回は、俄然本 気でやってくる。 ・以前の大会で、日本チームのメジャー選手はイチロー以外少なかった。野球 はサッカーと異なり、競技人口は多いがやっている国は意外と限られている。 サッカーの協議団体FIFAの加盟国は、国連加盟国より多い。なぜかというと、 英国のように同じ国で4つの加盟団体がある国がある。アフリカの多くの国 も、国連には未加盟でもFIFAには加入している国も多い。ところが、野球、 ベースボールとなると途端に少なくなる。今回も予選リーグは20チームの参加 だ。かき集めても20チームしか集まらない。サッカーのワールドカップとなる と、全世界が対象で予選の参加国の数は比較にならない。やはり世界的なス ポーツとなるとサッカーで、特にヨーロッパでは一番メジャーなスポーツだ。 盛り上がりが違う。 ・今回はアメリカが本気だから、参加国は少ないが、非常に面白い。アメリカ のメジャーに出ている選手は中南米、アジアを始め多くいる。その多くが今回 参加するので、非常にレベルの高い試合を見ることができるだろう。韓国、台 湾、プエルトリコ、キューバ、ベネズエラなど、アメリカ以外の国のメジャー の選手も多数出場する。自国の国旗が入ったユニフォームを着て試合をするの で、国を背負って戦っているという気持ちの盛り上がりがすごい。しかし、オ リンピックでは正式競技になかなかならない。東京五輪は開催地が日本だから 特例で、野球とソフトボールが正式種目になった。しかし、来年のパリ五輪で は正式種目から外された。これだけ見ても、野球が全世界的なスポーツではな いことがよくわかる。 <僅差の緊張感があるゲーム> ・さて、今回の侍ジャパンはどうだろうか。予選リーグは突破できるだろう が、そこからがなかなか厳しい戦いになるだろう。トーナメントになると一発 勝負だから、本当に僅かのミスが命取りになる。点数が多く入るとは思えない ので、強豪チームに勝てるとすれば僅差の勝負になるだろう。ミスが出たほう が負けになる。ミスは単純な守備のエラーもあるが、記録に出ないミスも野球 は結構多いのだ。2アウトランナーなしからの不要な四球。3人で終われば3 者凡退で次の攻撃にはずみがつくのだが、不要なランナーを2アウトから出し たばっかりに、その後の展開が大きく変わってしまうという例は多い。8番 バッターに不要な四球を出したがために、9番にまで打順が回り、次の回が1 番バッターから始まって点が入ったということにもある。 ・1アウトランナー1塁で、セカンドゴロ。絶好のダブルプレート誰もが思っ たが、セカンドから2塁ベースに入ったショートへの送球が少しずれて、打者 走者がセーフになった。チェンジになるところが、2アウトでランナーが1塁 に残ってしまった。こういうケースではほとんど次のバッターに長打が出て、 1塁に残ったランナーが生還するケースになる。記録上はダブルプレーになら なかったのはエラーにはならないが、明らかにチェンジになるところがならな かった。ピッチャーも気落ちして、がっくりくる。次の打者の初球に痛打され ることが多い。こういうときは、タイムを取って少し間をおかないといけな い。気持ちをリセットして、次の打者の初球に気を付ける。逆にバッターは初 球を狙うことが多い。 ・外野に飛んだ打球の中継プレーがまずくて、ランナーに次の塁を許してしま うと、それだけでピンチになる。外野の間に飛んだヒットの当りを、うまいセ ンターなら単打に収める。ところが足が遅いセンターや、肩が弱いセンターに なると打者走者が2塁を狙うことができる。ヒットが2塁打になる。ランナー が2塁まで到達すると、1点もやれない場面では外野がバックホームに備え て、数歩前に出てくる。ヒットの場合、本塁で2塁ランナーを殺さないといけ ないからだ。そうなると、右中間、左中間が広くなってしまう。普通なら捕れ る外野フライが間を抜ける。ランナーが1塁で止まるのと、2塁まで行くのと は、守っている立場からすると雲泥の差がある。もちろん、イニング、アウト カウント、点差、打順などで変わってはくるが。 <野球はミスのゲーム> ・攻撃のミスもごまんとある。サインの見落とし、バントの失敗などは防げる ミスだが、どうしても緊張感満載の場面では、うまくいかないことが多い。い ろいろな方法はあるだろうが、成岡が現役でやっていたときは、ベンチからの サインは監督の横にいる選手がサインを出すことになっていた。WBCではどう するか知らないが、監督→3塁コーチというのが普通だ。プロでもサインの不 徹底、見落としは起こり得る。3塁コーチから出るサインは、ボールが捕手か ら投手に返球されるときに出すのが普通だ。ということは、投球がストライク かボールになり、その瞬間に監督がベンチからサインを出さないと間に合わな い。一瞬迷ったら、もう間に合わない。なので、盗塁などは行ければ行ったら いいというサインもある。 ・進塁打というのがある。ランナーの塁を進める打球だ。1塁にランナーがい るときは、右を狙って打つのが常道だ。セカンドゴロを転がすと、打球によっ てはランナーが2塁に進める。逆に、当りが強いとダブルプレーになる場合も ある。ぼてぼての弱い打球のほうが進塁打になりやすい。いい当りが必ずしも いい結果に結びつかない。当り損ないのゴロがセーフになり、打ち損じがヒッ トになる。芯に当たった強い打球が正面に飛んでしまうこともある。ライナー になるとランナーが飛び出してダブルプレーになる。運がなかったと言えばそ れまでだが、ラッキーとアンラッキーは紙一重だ。だから面白いと言えば、面 白い。運も大きく作用する。技術だけではない。 ・一番難しいのは、投手の交代のタイミングだろう。WBCはDH制だから、投手 は打席に入らない。入らないから投手の打席に代打を送ることはない。DH制が ないセリーグの場合は、チャンスで投手に打席が回ることがある。代打を送れ ば次の回投手は交代する。悩むのは、味方がピンチになったときの投手交代 だ。その回の最初から投げるのと、ランナーが残ってリリーフするのとでは、 月とスッポンくらいの差がある。ランナーがあるとセットポジションで投げな いといけない。とにかく、ランナーが気になる。フォークボールのワンバウン ドも投げにくい。落ちる球は、キャッチャーが前に落としてくれないと、ワイ ルドピッチになる。特に、3塁に走者がいると、非常に神経を使う。次第に、 疲れがたまり、集中力が低下する。 <優勝は難しいだろう> ・このように、野球は不確定要素が多い。打者は3割バッターが凄いというの だから、逆に言えば残り7割は凡打、つまり打ち損じなのだ。ヒットの出る確 率が3割だとすれば、連打は3割×3割=約1割の確率しかない。3連打など は、さらに3割の確率だから、0.3の3乗なので、0.027つまり、3%の確率で しかない。100回で3回の確率だ。だから、連打で得点が入ることは稀だ。そ こに、エラー、四球、ミス、予期せぬ出来事が起こり、なぜか点が入る。この 失点を最小限に抑え、数少ないチャンスに確実に得点する。侍ジャパンが強豪 アメリカなどに勝つには、この戦略しかない。打ち勝つなどはあり得ないの で、守り勝つ野球に徹しないといけない。なので、30人のうち投手を15人も入 れたのだろう。 ・そのとばっちりで、外野が5人しかいない。そのうちの一人が故障でリタイ アした。右バッターの大砲が欲しかったが、どこでも守れる選手が選ばれた。 とにかく、先取点を取りに行って、僅差で後半に持ち込み、6回くらいから毎 回投手をつないで逃げ切る。ひとつのミスも、エラーも許されない厳しい試合 になるだろう。大量点を取って逃げ切るなどという楽な試合はひとつもない。 失点を最小限にするには、守備が固くないといけない。確実に27個のアウトを 取る。先頭打者を四球で出すなどは、論外。守り勝つ野球に徹するには、1個 のアウトを確実に取ることだ。3時間近くの試合最中にはミスも起こる。しか し、そのミスもひとつにとどめる。2つ連続してミスが起こると致命傷にな る。傷口は大きくなると修復できない。 ・現時点での個人的な予想では優勝は難しいだろう。3戦の練習試合を見てい ると、打線が本調子ではない。投手はまずまずだが、3試合目の中日戦では中 継ぎ陣の不安定さが目立った。大リーグのボールに慣れていないというハン ディもある。大リーガーの数名がまだ参画していないので、レベルはアップす るだろうが、チーム戦だから一人が傑出していても勝てない。投手と守備陣は 計算できるから、まず守りを固めて不要な失点をやらないことだ。そして、確 実に1点を取りに行って、僅差の接戦に持ち込む。万が一、延長のタイブレー クになった場合も、守り勝つ野球に徹することだ。途中で方針を変えてはいけ ない。指揮官が迷うと結果は凶と出る。相手の僅かのミス、スキを突ければ勝 機もあるはずだ。優勝の確率は3割くらいか。勝利の女神はどこに微笑むか。 楽しみだ。