**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第738回配信分2018年06月18日発行 これからの中小企業経営の重要課題 経営者の自分磨き7回シリーズその1 〜日常のリズムを点検し常に修正する〜 **************************************************** <はじめに> ・前回のシリーズの最後先週号で、中小企業の成長は社長の器そのものにか かっていると書いた。今でもそのように思っているし、おそらく未来永劫にこ の信念は変わらない。それくらい、中小企業の経営は社長の双肩にかかってい ると言っても過言ではない。責任が重たいと言えばそれまでだが、責任が重た いほど権限も幅広く、自分の責任でいろいろなことができるというのは、男子 の本懐に勝るとも劣らない。いくら多くの報酬をもらっても、やりがいのない 仕事ほど空しいものはない。ただ単に売上を伸ばす、利益を増やすだけではな い、本当の意味でのビジネスの目的を見出さないといけない。 ・器を伸ばし大きくし、自社のビジネスの成長を促すには、まず経営者自身の 日常生活を点検することから始めるべきだ。何も聖人君子のように立居振る舞 えというのではないが、少なくとも組織の頂点に立つ人は、周囲の多くの人か ら背中を見られていることを意識するべきだ。後ろ指をさされないように、後 ろから鉄砲の弾が飛んでこないようにするべきだ。そのためには、意識をしな いでもいろいろな日常の動作がスムースに円滑に自然にできるようにしないと いけない。日常のルーティンワークにエネルギーを使い果たしたり、時間をか けたりすることを、極力避けないといけない。 ・まず、使うものを極力減らしてシンプルにする。道具は上等なものを使うの は大事なことだが、多くの種類を持つ必要はない。大は小を兼ねるといい、大 きな道具をいかにうまく使うかがポイントだ。種類を絞り込み、これぞと思っ た道具とは心中するくらいのつもりで壊れるまで利用する。あるいは一定時間 使用したら壊れる前に交換する。予防保全という考え方で、飛行機は数万時間 飛んだら、故障しても故障していなくても、強制的に部品は交換する。夥しい 数の部品を都度点検して交換するより、交換する期間を決めておいて期間に到 達したら交換する。そのほうがトータルコストは安い。 <紙の資料は捨てる> ・紙の資料とデジタルデータの資料の区別を明確にする。社会人になって40年 以上経つが、この間紙の資料を捨てて後悔して困ったことは数度しかない。し かも、この間4回会社を変わり、東京に単身赴任を3度延べ10年滞在し、引っ 越しは個人と会社のオフィスを加えると20回以上経験した。その都度有り余る 紙のデータを廃棄したが、そのあと困ったことはほとんどなかった。それくら い、我々の周辺には使わないものが満ち溢れている。一度徹底的に整理して、 捨てる勇気を持ち、果敢に捨てることだ。捨てて余白を作らないと、新しいこ とは満杯の頭には入らない。 ・捨てることは日常なかなかできないので、年間3回と日程を決め年中の恒例 行事に格上げする。5月の連休中の1日、お盆休みの中の1日、年末年始の1 日を「廃棄デー」に充てる。この日は一日中捨てる書類や廃棄する書類を選別 し、実際に捨てる。捨てるためには準備が要る。ゴミ袋や段ボールなどを準備 し、残す紙の資料をきちんと整理できるように付箋紙やファイルを用意する。 残す資料はどういう順番にどういう風に整理し格納すればいいかを、事前に決 めておく。成岡は紙で残す資料は会社名の50音別に収納するようにしている。 分野や業界、ジャンルなどというあいまいな区分は難しい。 ・雑誌や新聞などの参考になると思って残した資料も、実際復活して取り置く 資料はほとんどない。見た時点では必要と思っていた資料や記事も、時間が経 てば賞味期限は切れることが多い。そのときは新鮮な記事だったが、その後そ れを上回る資料が出てきて、一気に賞味期限が短くなった。不易流行というこ とばがあるが、永遠に置いておく必要がある資料は、そう多くはない。仮に置 いておくなら、さっと必要なものが引き出せるようにインデックス(目次)な どを作っておかないと、置いた意味がない。探すのに時間がかかるようでは、 最悪だ。整理とは捨てることであり、整頓とは探す必要のない状態を指す。 <1日4ブロック15分が1コマ> ・身辺を軽くし、文房具などの道具類もこれと決めたら浮気しない。もらいも のの文具もあるが、周囲の人にすぐにプレゼントすればいい。道具は使い込め ば、手に慣れてくるし、何より居心地がいい。ストレスがない。その代わり、 気に入るものが見つかるまで徹底的に使い込む。そして自分で判断する。例え ば手帳。この同じタイプ、同じメーカーの手帳を永年使っている。もう40年以 上になるだろうか。多少デザインは変わったが、ほとんど同じだ。これくらい 永年使い込むと、完全に手に馴染んで考えなくても手が動く。それくらい道具 は同じもの、気に入ったものを、徹底的に使い込む。 ・ことほど左様に、こだわりを持ったほうがいい。頑固なくらいに自分流を作 り、それを徹底的に改善する。オフィスのレイアウト、デスク上の配置、キャ ビネットやロッカーへの収納、格納の方式など、自分流を編み出すまで徹底的 に拘る。なぜかというと、こういう環境が日々変化するとそれに対応するだけ で神経を使うし、エネルギーを消費する。重要な肝心なことに神経を集中し、 徹底的に深く考えるには不要なことに気が行かないようにするのがいい。本来 あるべき場所にあるべきものがあり、必ず元に戻すことを徹底する。現場の3 Sなども、この原理原則で動いている。自ら実践しないといけない。 ・海外出張や長期の国内出張などの非定常な状況は別として、一日、一週間、 一か月、一年間のおおよその行動様式も、基本は決めておく。一日を4ブロッ クに分け、午前、午後前半、午後後半、夜の4つにうまく流れるように仕事を セットしていく。そうはうまくはいかないが、そう心がけてやるのとやらない のとでは、長い期間では雲泥の差が出る。1ブロックは15分を1コマと考え、 15分あれば何かまとまったことができるという原則に基づき、15分あれば必ず 何かができるように環境を作っておく。移動の15分、時間待ちの15分、切れ目 の15分などはいくらでもある。 <日常生活のいいリズムを作る> ・月間や年間の大まかな会議の日程なども決めておく。成岡の例を挙げると、 4月から社会人大学院の講義が15コマ、3か月間続く。連休を挟むので6月の 中旬まである。それが終わると、別の講座が始まる。これがお盆前まである。 これに相当の時間が拘束され、エネルギーもかかる。費用対効果は少ないが、 毎年少なくとも自分より若い受講生に囲まれて、お互いに真剣に勉強するのは 非常にエキサイティングだ。彼らも多額の投資をしているから、それに応える ようにしないといけない。まさに切磋琢磨の期間なのだ。真剣勝負の半年間を 乗り切るには、日ごろからの充電が欠かせない。 ・この準備にも相当の時間とエネルギーがかかる。これが終わると、予算の執 行が始まり、公的機関が動き出す。4半期の3か月を目途にいろいろな計画を 立て、何月にどういうイベントを組むか、どういう会議をするか。講演会を企 画するか。海外出張は9月の前半でないと入れられない。大きな会議やイベン ト、企画行事は年間のイメージの中でおおよそ組み上げておかないといけな い。間際になってさあどうしようとなっても、会場はないし参加者の日程も揃 わない。おっつけでやるとうまく行くことは皆無に近い。準備段取りが8割で きていれば、もういい結果が見えている。 ・自分自身の行動計画、日常の行動パターン、価値判断の基準などを日ごろか ら意識して行動するのと、しないとのでは結果的に大きな差が付く。24時間 365日をこのように過ごすには、集中と弛緩のバランスを取ることが大事だ。 遊ぶときは徹底的に遊べばいい。弛緩するときは徹底的に緩んだ方がいい。そ して、それが終わったらさっぱり忘れて切り替える。このオンオフをうまくや ることが経営者の大事なノウハウだ。常にオンでも難しい。決断の場面は突然 やってくることも多い。その時に足が出るように、日ごろから日常生活のいい リズムを作ることに心がけることだ。