**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第721回配信分2018年02月19日発行 これからの中小企業経営の重要課題 他社との連携を考える7回シリーズ:第5回 〜衆知を集め決断しやってみる〜 **************************************************** <はじめに> ●外部の他社と連携し、いろいろな新しいことを進めていくには、プロジェク トの中心でマネジメントをする人の「胆力」が必要だ。「胆力」とはわかりや すく言えば決断力だろう。最後の最後は、誰かが決めないといけない。決めな いとものごとは進まない。いつまでも結論先送りでは、時間とおカネばかりが 浪費され、いつまで経っても結論が出ない。現在検討している方法でダメな ら、他の方式を検討しないといけない。ならばやってみて、結果が判明して、 その結果を無駄にしないで、次につなげないといけない。 ●利害の関係する、特に対立する企業同士が集まって、連携して、一定の目的 を達成するプロジェクトは外部から見れば格好いいが、やっている当事者たち は大変だ。特に、利害が相反する企業同士が集まると、何かとおカネに関係す ることが多く、なかなかすっきりまとまらない。仕入先の企業と得意先の企業 とでは、当然仕入先の企業は高く買って欲しいし、得意先の企業は安く買いた い。当初は和気あいあいと話しがはずむが、いったんおカネの話題になると非 常にシビアーな会話になる。緊張感が高まり、双方が譲らない。 ●初めからきれいごとでことは進まないが、当初は大所高所の目的達成のため に、意外と一致団結して進もうという意見には誰も逆らえない。これが現実の ビジネスで、売上、費用、利益が目的になると双方の利害は圧倒的に対立する が、プロジェクトで目的が社会貢献、地域貢献、新事業開発など大義名分が立 つなら、そちらのほうが当初は優先する。いや、優先しないとプロジェクトは 進まない。大義名分とは、大きな目的だ。双方の利害を超えたところに最終の 目的地がある。そして、達成したい目標がある。それは非常に綺麗な言葉で表 現されている。 <期限を切ること> ●そのために、メンバーの衆知を集める。一番よく使われるやりかたは「ブ レーンストーミング」だ。これは、いろいろなメンバーが交わる会議などで、 意見を出し合う際によく使われる。一定のルールがあり、「批判しない」「否 定しない」「すべていったん受け入れる」など、フリーに意見を出すための事 前の申し合わせがある。このルールを守らないと、なかなかいい意見が出てこ ない。プロジェクトのマネジャーや、このブレーンストーミングの司会、ファ シリテータをやる人は、事前にしっかり進行のイメージを作っておかないとい けない。 ●そして、テーマを設定し時間を切る。時間を切らないといけない。ただし、 テーマが難しい場合、次回に先送りする場合もある。急いで結論を求めると、 まあいいか、という妥協的な結論に行く場合がある。今回、この場の1時間で 意見集約するのか、次回2週間後のミーティングで続きをやるのか。延期する のは悪いことではないが、あまりお薦めではない。先に延ばしたから、いい意 見が集まるかといえば、大半のケースでそうではない。延期した、期限を先に 延ばしたから、ベターな結論に至るかといえば、そうではない。 ●衆知を集めるときの原則は、テーマを具体的に設定することと、カットオー バーつまり期限を切ることだ。1週間で結論を得ようとするなら、あまり急激 に議論を進めても難しい。つい先日このようなケースが生じ、非常に後味の悪 いことになった。ある事情で期限を設定したが、その設定した期限に対しプロ ジェクトチームのメンバー全員が納得できなかった。期限が納得できないまま 進めると全員のモチベーションに亀裂が入る。期限の設定は非常に大事な要素 だが、それを性急に進めてはいけない。このプロジェクトは空中分解した。 <次には結論を出す> ●意見が出尽くしたと思ったら、いったん中断して新しい課題を探して、また 持ち帰り次の回の宿題にする。そして、このような方式を繰り返えしている と、次第に出口に近づいているという実感が湧いてくる。湧いてこないとき は、何か方向が間違っていないか、リーダーは点検する。毎回のテーマにマッ チしないメンバーも出てくるが、だからと言って欠席者が出るようなことにな ると、メンバーの結束が崩れる。欠席を容認すると、次第に欠席者が増えてく る。そういうものだと割り切る人もいるが、離脱者落伍者が出るのはよくな い。 ●多少縁の薄い人や会社もあるだろうが、それは勉強だと割り切って参加は確 保しないといけない。そうでないと連携する意味がない。意外と、門外漢や関 係ない業界の人から、思いがけない質問や発言が出る場合があり、それが解決 の糸口になることも多い。その業界に所属する人にとっては常識であり、当然 のことなのだが、業界外の人から見れば、何と馬鹿げたことをやっているのだ ろうと思うときも、ままある。そんなときは、業界外の人の意見は大変貴重 だ。まさに衆知を集める意味はここにある。 ●議論が煮詰まってきたら、ぼちぼち結論を出そうと提案する。そして、いっ たん一定の結論に集約する。異議のある人もいるだろうが、全員の賛成などあ りえないと腹を括る。そして、結論を確認したら、すぐに行動に移る準備をす る。できれば、事前にこういう結論になりそうだと見えたら、多少フライング でもいいから準備を始めた方がいい。時期の選択と言う重要な要素もある。年 に数回しか手に入らない材料が必要なら、相当事前に入手の段取りをしておか ないといけない。時期を逸すると、また1年かかる場合がある。 <ときには環境を変える> ●最後に決断して、実行する。実は、大半はやってみないと分からないことが 多い。事前に学習し、想定し、予想し、準備をしていても、想定外のことは必 ず起こると持った方がいい。いや、想定外のことが起こるから人生は楽しいの だと、楽観的に考えることだ。やっても、やっても、うまくいかない。いろい ろと方法を試してみたけど、うまくいかない。そんなことは、実は山ほどあ る。むしろ、想定通り行く方が稀なのだと思えばいい。時間やおカネばかりか かって無駄と考えずに、月謝を払って勉強しているのだと思えばいい。 ●企業活動だから、費用もかかっている。人件費も馬鹿にならない。いつか、 どこかで結論を得ないといけないし、結果も出さないといけない。うまくいか ないときは、環境を変えてみる。同じ環境でやっていると、どうしても発想が 貧弱になる。気分転換も必要だ。頭が硬くなると、いい発想は生まれてこな い。集中してやることも大事だが、たまには弛緩して緩むことも重要だ。隙間 を作らないと、新しい発想は入ってこない。頭の中が既存のイメージで一杯だ と、新しい発想は湧かない。リーダーは環境を変えることも選択肢に入れてお く。 ●出口が見えてきたら、あとはメンバーの自主性に任せばいい。マラソンでは ないが、35Kmくらいが一番しんどいし、辛い。40Kmを超えると、あとはゴール してからのことを考えている。そして、リーダーはこの連携チームのプロジェ クトが終わり加減になった頃を想定して、次の手を打っておく。メンバーのこ と、おカネのこと、事業化すること、組織のこと、などなど山ほどやることは ある。解散することもあり得るが、せっかくの連携を次につなげる方策を考え ておくことも大事だ。こういう貴重な経験を、なるべく若いうちにすること は、非常に貴重だ。