**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第720回配信分2018年02月12日発行 これからの中小企業経営の重要課題 他社との連携を考える7回シリーズ:第4回 〜誰かがリーダーシップをとる〜 **************************************************** <はじめに> ●プロジェクトや多くの外部と連携して新しいタスクを進めていく場合、一番 大事なのはその真ん中で旗を振る人の「リーダーシップ」だ。この「リーダー シップ」というのが、意外と曲者でなかなかこれだと決められないものだ。一 般的には、メンバーに方向と目標を示し、メンバーの気持ちをひとつにさせ て、そして結果を出す、というのがリーダーの務めなのだろう。いろいろな 形、パターンのリーダーシップの発揮のやり方があるだろうが、それぞれの トップはそれぞれの得意技でリーダーシップを発揮すればいい。 ●リーダーシップの発揮の仕方には、いろいろな方法があるだろう。ある人 は、過去にやってきた膨大な経験をベースに、それを自分のエネルギーに変え てリーダーシップを発揮しようとする。本人は、今まで山ほどいろいろな経験 をしてきた。それを後輩や従業員に伝えたい。いや、伝えることが義務だと 思っている。悪いことではないが、これが押しつけになると良くない。アドバ イスとして言うのはいいが、トップが過去の経験を語り出すと、正直始末に悪 い。だいたいが自慢話になる。誰もそれを停められない。また、始まったとい うことになる。 ●知識を持っている人は、その知識を発揮してリーダーシップを発揮しようと する。学識経験者、学校や大学の先生、教員、大学で相当な勉強を積んだ人な どは、その知識で勝負しようとする。これも間違いではないが、ビジネスの現 場ではなかなかこの知識でリーダーシップを取ることは難しい。その場その場 で状況は、時々刻々と動くから習得した勉強した知識が役に立つ場面と立たな い場面がある。それを適宜判断して、最適な結論を得るのは、この知識だけで も難しい。総合的な、大所高所の判断が要る。 <行くべき方向を明示する> ●立場が高いことを利用して、リーダーシップを発揮しようとする人は多い。 自分のポジションが上だから、なかば命令的に強権を発動する。通常の日常業 務ならそれでもいいが、連携したり外部の人とチームを組んでやる場合は、こ れもうまくはいかない。その組織、会社ならそれで通用するが、外部のスタッ フを連携して、プロジェクト的にオープンな組織体で動く場合は、その所属す る組織のポジションは忘れた方がいい。身分や階級は組織によって異なるから だ。どんなチームでも、これをやるといずれ崩壊する危険がある。 ●ことほど左様にリーダーシップを発揮するのも難しい。通常は、一歩引いて メンバーが気持ちよく活動できる環境を整えるのがリーダーの役目だ。自分が どんどん出しゃばるより、メンバーが個々に力を発揮する環境を整える。足り ない資源があれば、それを先行して補充する役目を担う。全体に気配り、目配 りし、足りない資源がないかを探す。そして、それを黙って手配補充する。い ちいち自分がそれをしてやったなどとは言わない。そういうことは黙っていて も、全員が分かっている。半ば黒子に徹する方がうまくいく。 ●前提としては、チームの行くべき方向がきちんと明示されていることだ。こ れがリーダーの最大のミッションであり、役目だ。いくら日常で気配り目配り できていても、大前提のチームが何をやるのか、どこに行くのかが明確になっ ていないといけない。これを決めるときこそ、リーダーのリーダーたるポジ ションが重要になる。ここは、一番リーダーシップを発揮して、頑張らないと いけない。ここで、やらないと後悔する。全員の意見を聴き、十分に考え、そ して決断する。決断した結果は、すみやかに全員にきちんと伝える。 <見本を示す> ●全員に周知徹底することも、なかなか難しい。会議やミーティングをして、 伝えたらそれで終わりではない。伝えたあとが問題だ。5分や10分しゃべって 説明したらわかったかと言うと、おそらくほとんど伝わっていないと思ったほ うがいい。分かったような顔を全員がしていても、疑ったほうがいい。そし て、終わってから個別に、再度くどいようだが念を押す。あのときこういう風 に言ったが、それはこういう意味だとか、解説をする。このダメ押しフォロー が結構重要なのだ。面倒くさい、邪魔くさいと言って、手をかけないと失敗す る確率が高くなる。 ●リーダーの責務は。この目的地を明確にすることだ。目的地の分からない連 携やプロジェクトはあり得ない。しかし、意外とこの目的地が明確ではないこ とが多い。方向は示すが、目的地が明確ではない。南に行けとは言うが、どこ に行くのか分からない。そうなると、メンバーや外部のチームは非常に不安に なる。どこに、いつまでに行くのかによって、準備も変わるし、意識も異な る。何より、緊急度が変わる。来月の話しなら慌てるし、来年の話しなら十分 準備に時間をかけていい。全然意識が異なる。 ●次にするべきは、行動して道筋をつけることだ。号令だけして、あとは放任 するのは良くない。あまり出しゃばる必要はないが、うまく動き出すまでは自 分の責任だ。どういう風にすればいいかを、まず自分自身で手本を示す。ある いは見本を見せる。自分が苦手なら、誰かにそれをやってもらう。そうして、 こうすればうまく行きそうだという感覚を持ってもらう。リーダーがこの手本 を示せないといけない。スポーツで言えば、キャプテンであり主将であるか ら、やはりその業務や分野に長けている人でないと務まらない。 <最後に結果を出す> ●そして最後に結果を出す。チームやプロジェクトで結果を出せばいい。連携 とはいろいろな能力を持った組織やメンバーが有機的に協力して結果を出すこ とだ。自社や自分だけでやることは難しい時代になった。オープンにすればイ ノベーションも起こり得る。閉じた組織で悶々とするより、ドアを開いて入っ てくる人を多くする。確かにいろいろなものを見せないといけないので、具合 の悪いこともあるだろう。新連携の申請には、連携する各社の財務諸表が必要 だ。それくらいオープンにしないといけないのだ。 ●結果を出すのがビジネスの原点だ。ボランティアでもないし、慈善事業でも ない。結果は売上でもないし、利益でもない。明確に定めた目標に、明確に定 めた期限や期日までに到達していることだ。その決めた工程を見て、どうも危 なさそうだと思ったら、ここはリーダーが前に出ていかないといけない。腰が 引けて、足が出ないのはよくない。危ない場面でこそ、身体を張ってチームの ミッションを貫徹しないといけない。具合が悪くなると、逆にメンバーに責任 をなすりつける人がいるが、それは最悪だ。 ●明確に目標を定める。そして環境を整える。最初は手本や見本を示して見せ る。メンバーに自信を持ってもらう。そして、最後は結果を出す。リーダー シップとは、この一連の動作、流れを行うことだ。ことはそう簡単ではない。 ある場面では前に出て、ある場面では逆に退いて、組織がミッションを達成で きるように気配り、目配りして動くことだ。そういうリーダーが組織にいれ ば、必ず成功する。逆に、そういうリーダー不在の連携なら、早晩瓦解する。 過去の歴史がそれを物語っている。あとは、学んで現場で実践することだ。