**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第719回配信分2018年02月05日発行 これからの中小企業経営の重要課題 他社との連携を考える7回シリーズ:第3回 〜明確な目標とタイムスケジュールを設定する〜 **************************************************** <はじめに> ●特に他社と連携する場合に限らないが、どんなプロジェクトでも明確に目標 とタイムスケジュールを決めることは重要だ。プロジェクトとは、期限を切っ て特定の目標を連合艦隊のような混成部隊でやる場合が多い。いろいろな部 署、いろいろな部門、いろいろな外部の会社や企業からの選抜隊が、一定の期 間その目標に対して仕事をする。そして、その目標が達成したら、解散する。 そういうやり方が多い。外部の企業やチームと連携して、新しいことを始める 場合は、このような方式を採ることが多い。プロジェクトマネジメントという 言葉がある。。 ●まさに、プロジェクトをマネジメントするのだが、簡単に言えば、どこに行 くんだという目標を新しく全員に分かるように明確にする。山なら富士山なの か、愛宕山なのか。それによって装備も違うし、かけるコスト、おカネも変 わってくる。愛宕山なら比較的軽装でも登れるだろう。靴もスニーカーでもい いかもしれない。登りに2時間、下りに1時間くらいで大丈夫だろう。なら ば、朝早く出れば午前中で帰ってくることもできるだろう。そういう計算が立 つ。そうなると、準備や段取りのイメージが見えてくる。 ●これが富士山となると大変だ。まず、装備が十分でないといけない。まし て、登る季節が冬場だと、とんでもない。夏場ならなんとか素人でも登れる が、冬の富士山はベテランでないと危ない。成岡は確か8月に登った記憶があ るが、それでも山頂はガスで覆われ、結構温度が低かった。それと空気が薄 く、少し高山病のような症状になり、頭が痛かった。持参した昼食をほとんど 食べ残して下山したのを覚えている。麓に戻ったら、けろっとしていたからや はり高山病に一時的にかかったのだろう。初めて登って、いい経験をした。 <期限を設定するのは経営者のミッション> ●ことほど左様に、どの山に登るかを明確にしないと準備段取りが見えてこな い。スローガンだけ決めて、具体的な山を提示しない経営者の方もあるが、そ れは明確に間違い。そんなプロジェクトを立ち上げたら、少し稼働した時点で 空中分解することは、目に見えている。まだ、社内のプロジェクトなら解散す ればいいが、社外のいろいろな人、いろいろな部門、いろいろな企業を巻きこ んでやるとなると、ことは結構重要だ。数回、プロジェクトの会議、ミーティ ングをやった時点で、おそらく解散することになる。 ●まず、明確にゴールを設定すること。特別なタスクを成し遂げるのだから、 より具体的にゴールを設定しないといけない。できれば、現実的な数値をあげ て、メンバーにゴールのイメージが描けるようにしないといけない。抽象的な 表現で、改善するとか、良くするとか、そんな抽象的な表現ではメンバー全員 の共通のイメージが持てない。ゴールが具体的でないと、作業の進行や段取り がつかない。まして、そのプロジェクトに専従でかかりきりになる人がいる場 合はなおさらだ。ゴールを具体的に提示するのは、経営者の務めだ。 ●次に、その具体化されたゴール、目標に向かって期限を設定する。どんな仕 事も期限のない仕事はあり得ない。単調な作業でも、必ず期限がある。「いつ までに」という期限を設定する非常に重要だ。この期限の設定によって、かけ るエネルギー、時間、コストが全くと言っていいほど変わってくる。あと数か 月の話しなのか、あと数年の話しなのか。数か月なら俄然、慌てないといけな いし、数年ならやり方をいろいろと検討する時間も少しはある。この期限を設 定するのも、経営者の大事な仕事だ。 <目標や期限の合理的な説明が重要> ●期限を設定すると、かなり具体的になるはずだ。短期間でとか、そういう抽 象的な表現は通用しない。いついつと明確に期日を設定できるはずだ。重要な ことは、その設定された期日が、どうしてその期日なのかという説明が要る。 ただ、なんとなくということはあり得ない。特に、社外と連携してプロジェク トチームを組む場合、プロジェクトを主催する企業の都合で決まることが多 い。その合理的な説明ができないと、参画する他の企業からすれば、そんな都 合のいい期限を設定しても無理だというクレームになって返ってくる。 ●合理的な説明とは、大半の人が納得するということだ。期限の設定に明確な 根拠があって、その説明がすとんと全員のお腹に落ちることが重要だ。しかも ぱっと聞いて、さっとわかるという、このわかりやすさも大事な要素なのだ。 その設定された期限と明確な目標があると、連携して作業するチームの中は、 俄然やる気が出てくるはずだ。具体的なプロセス、やり方、方法は、チームの マネジャーに任せたほうがいい。経営トップがその具体的な方法にまで口を出 すと、意外とうまくいかない。ミッションが明確なら、マネジャーに任せる。 ●費用やコストも、この目標と期限が明確になると、おのずと見えてくるはず だ。山の高さと登る山のイメージが描けると、費用もおおよそは見えてくる。 費用が見えてくると、具体的な作業の工程も見えてくる。いついつまでに、こ のようにという優先順位も描けるはずだ。特に、他の会社や企業、チームと連 携して、昨今流行のオープンイノベーションなどという大層なことを企画する 場合は、とにもかくにも、この目標と期限を明確にすることだ。その結果、メ ンバーや費用なども具体的にその連携チームの責任者がプレゼンすることにな る。 <キックオフをきちんと行う> ●経営トップは、そのマネジャーの報告を聞いて判断する。こう書けば、何や ら格好がいいが中小企業ではそんな優秀なメンバーがたくさんいないから、 トップがプロジェクトを直接指揮、監督、運営する立場になる。外部の企業と 連携する場合でも、代表者が出て行って直接そのチームに参画し、連携し、運 営する。意外と代表者がチームの責任者をすると、運営がうまくいかないケー スが多い。つまり、自分で納得し、わかっているから、この目標と期限を明確 に外部に伝えることを手を抜いてしまう。そんなこと、言わなくても分かるだ ろうとなる。 ●このことが、チームのメンバーに疑心暗鬼を生む原因となる。みんなの気持 ちが一体とならない。モチベーションが上がらない。気持ちがばらばらになる と、早晩そのチームの運営は行き詰まる。初めは会議やミーティングをして も、多くのメンバーが集まったが、そのうち回を重ねるに従い、参加の人数は 減って、数名しか集まらない。会議にもならないし、プロジェクトは一向に進 まなくなる。そうなると気は焦れど、ちっとも中身が進行しない。時間ばかり 経過し、トップのいらいらは募ってくる。そして、とうとうご臨終を迎える。 ●まず、目標と期限を明確にする。そして、どうしてその目標が設定されたの か、なぜその期限でないといけないかを、トップが明確に説明しないといけな い。そこから外部の企業や会社、チームとの連携がスタートする。キックオフ と言う言葉があるが、サッカーやラグビーの試合開始は、このキックオフから 始まる。ここで、どれくらい説得力のある、合理的な説明ができるかが、勝負 の明暗を分ける。うまく行っていない外部との連携があるなら、今一度この明 確な目標と期限が設定されているかを点検してみることだ。意外と抜けている ことが多い。