**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第718回配信分2018年01月29日発行 これからの中小企業経営の重要課題 他社との連携を考える7回シリーズ:第2回 〜まずは自社から情報をGIVEする〜 **************************************************** <はじめに> ●他社や異業種で集まって、何かことを立ち上げようとしても、最初の数回は 何やらぎくしゃくしてことはうまく運ばないものだ。それまで相当親しい企業 同士ならいざ知らず、当日初めて会った代表者同士が、その場ですぐに永年の 友人のようになるはずもない。最近ではほとんどの企業がホームページがある ので、一定の情報は事前にゲットできるが、それでも限界がある。売上や利 益、従業員数など直接業績が判断できるような機微な情報は、ほとんど掲載さ れない。となると、たいがい既知の情報しか公表されていない。 ●それと、都合の悪い情報は発信されていない。いついつ、新製品を発売した が売れなくて撤退したとか、工場を増設したがうまくいかなかったとか、成岡 の在籍していた企業のように本社ビルを買ったが業績不振で売却したとか、ネ ガティブな情報は記載されていない。当然のことだろう。マイナスイメージを 持たれることを避けたい経営者心理は、非常によくわかる。しかし、成功例と 同じくらい企業には失敗例がある。いや、失敗例のほうが多いだろう。20の成 功に対し、80の失敗くらいではなかろうか。それくらい、成功の確率は小さ い。 ●しかし、失敗が悪いとはいえない。成功のための一定の道しるべだから、当 然失敗を重ねながらの成功なのだ。一発勝負でいきなり成功するわけがない。 そういう貴重な失敗の情報も、ほとんどオープンにされない。ヒット商品だけ がホームページに公開されていて、お蔵入りになった製品や開発途中で泣く泣 く諦めた仕掛品は、実は山のごとくある。また、とりかかった新規事業で目が 出なくて撤退した事業も数知れない。今から思えば、どうしてそんな馬鹿みた いな事業に進出したのか、信じられないという事業もあるはずだ。 <可能な限り包み隠さず公開する> ●しかし、他社から見ればその失敗した、不成功に終わった事業の情報も非常 に参考になるケースがある。その失敗に至る経過に多額の投資がされているは ずだから、実はその情報は非常に価値のある貴重な情報なのだ。あと少しで事 業化できたのに、何らかの都合で中断し、最終的には中止となった。担当者は 断腸の思いだし、諦めきれない担当者は、場合によってはスピンアウトして独 立して会社を立ち上げて、やっているケースもある。そして、意外とそれが成 功する場合がある。大企業では芽が出なかった事業が、花開くことも多い。 ●だから、他社と連携提携する際には、都合のいいこと、都合の悪いことも、 包み隠さずに公開しないといけない。こんなことを言ったら恥ずかしいとか、 バツが悪いとか、とかく代表者がプライドの高い人ほど、格好をつける。学歴 の高い人ほど、都合の悪いことはいいたくない。しかし、それでは本当の連携 体制は生まれない。成功も、失敗も、都合のいいことも、都合の悪いことも、 すべて白日のものもとにオープンにする、できるだけの度量が代表者にない と、その連携プロジェクトは成功しない。財務内容もしかり、事業内容もしか り。 ●通常の商取引なら、発注と受注があり、得意先と仕入先の関係になるので、 そんなオープンな情報は入手できない。与信や信用調査の課題となり、場合に よっては信用調査会社に多額の費用を払ってまで、公開されない情報を取りに いかないといけない。上場企業なら相当な情報が公開されてはいるが、中小企 業や零細企業では、まず公開された情報は限りなく少ない。また、たとえ決算 書を入手できたとしても、その数字が正しいという保証はない。かくて、先方 の代表者から発信される情報しか、信じるものはない。 <詰まったら外部にSOSを出す> ●そこで大事なのは、経営者同士の人間性の問題になる。経営者、トップとし ての生きざま、器量などの問題となる。先日破綻した成人式の着物のレンタル 会社の社長のように、都合の悪い事実はひた隠しにして、最後の最後まで金策 に走り回る。努力はしたのだろうが、結果的にあのような大きなトラブルにな り、詐欺と言う刑事事件になるだろう。そして、恥ずかしいのかしばらく公の 場に姿を現さない。最後の最後まで、必死になって努力した従業員がいたこと が、かえってこの悲劇をもっと悲劇にしてしまった。心が痛む。 ●まして、新しい事業を、プロジェクトを他社と連携し、協力し、立ち上げよ うとするなら、まずそれに向き合う心持ちをきちんとすることだ。自社の利益 のみを考えていないか。社会的に正しいことをやろうとしているのか。三方よ しに合致するのか。何よりも自社の社会的な存在価値を高めることにつながる のか。売上や利益だけを追いかけることが目的になっていないか。周囲の利害 関係者に受け入れてもらえる内容だろうか。今後5年、10年先を見て、その選 択は正しいか。そういうことを、一生懸命考え続けないといけない。 ●自分一人で考えていると、堂々巡りになる。同じところをぐるぐる回って、 なかなかそのスパイラルから抜け出せない。新しいことを考えるのが、窮屈に なる。余裕がないし、隙間がない。そんな詰まったときには、SOSを受け入 れ、気分転換を図れる友人や知人、知り合いの存在が必須になる。その外部か らのたった一言で目が覚めたり、アイスブレークが起こることがある。氷山が アッという間に溶けて流れ出す。どうしても一人で考えていると、脳みそが硬 直する。そこに、外部から窓を開けてくれて、新しい風を入れてくれる人が必 要だ。 <最後の最後はトップの人間性が試される> ●そういう利害で動かないメンターのような存在の人を、常日頃から確保、 ゲットしておく必要がある。電話1本で会えて、どこかにメシでも気軽に食べ に行けて、何でも聞いてくれて気の利いたアドバイスをしてくれるような人 を、3名くらいゲットしておくといい。連携先、提携先でもいい。それくら い、精神的に、心理的にお互いに近づかないと、なかなか新しいプロジェクト はうまくいかない。技術的な課題や、資金などを検討する前に、トップ同士が 心を開き、腹を割って話しができる関係を、まず構築することが大切だ。 ●そのためには、こちらから積極的にボールを投げる。いきなりあまりすごい 剛速球を投げると、むこうもびっくりするから、まずは取りやすい球をど真ん 中に投げる。そして、早いうちに投げ返してくれる球でないといけない。そう いう情報交換、情報公開を相互に行い、人となり、人間性、性格、くせなどが 分かった段階になったら、次の具体的な仕事の内容に入っていく。まずは、入 り口でお互いを知ることが大事だ。意外とこちらのことを分かっていると思っ ていても、そうでもないことが多い。むこうも、こちらのことがあまりわかっ ていないことが多い。 ●連携、提携は、結婚ではないかもしれないが、一時的に同棲するようなもの だ。一緒に食事もして、同じ屋根の下で生活する。今まで分からなかったいろ いろなことが、明らかになる。癖も出てくる、生活習慣も異なる。一時期とは いえ、そういう生活時間を相当長く共有するのだから、仕事がうまくいく、い かない以前に、まずお互いに信頼関係が構築できるかが大事なのだ。そのため の、情報発信であり、情報公開だ。それも、当然ながら正しい情報でないとい けない。要するに、最後の最後は、トップの人間性だ。それが、特に他社との 連携では試される。