**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第1158回配信分2026年07月06日発行 サッカーWC2026大会の日本チームの活躍を分析 〜日本サッカー協会の組織運営の勝利〜 **************************************************** <はじめに> ・6月30日未明午前2時から始まったFIFA2026サーカーWC決勝トーナメント。 ご存じのように惜しくも森保ジャパンは1−2で王者ブラジルに惜敗。ベスト 16のカベを超えられず、無念の敗退となった。成岡も本職は野球だが、当然球 技であるサッカーも詳しいし興味もある。当日も夜早く寝て2時に起きて、応 援した。点数は1−2で惜敗だが、前半は1−0でリードしてはいたが、30: 70で劣勢。後半は、同点にされてからはほとんど押されっぱなし。最後のア ディッショナルタイムで決勝点を奪われた。しかし、冷静に考えると、仮に同 点で15分ハーフの延長になっても、やられていただろう。ブラジルも最近では ランクが下がったとはいえ、世界ランクでは格段に上。まだ、勝てる相手では なかった。PK戦に持ち込めればどうかだったか。 ・26人のメンバーのうち、23人が海外チームに所属している。国内チームの所 属は3人のみ。大半の選手は、海外しかもドイツ、イタリア、フランス、オラ ンダなどサッカー強国でプレーしている。以前では考えられなかったことだ。 ちなみに、ChatGPTに問い合わせると、以下の情報が簡単にもたらされた。ま ず、1998年フランス大会に初参加したときは、22人中ゼロ人。以下、2002年の 日韓大会では23人中4人、2006年ドイツ大会では23人中6人、2010年南アフリ カ大会では23人中4人、2014年ブラジル大会から急激に増えて23人中12人、本 田圭佑、香川真司、長友佑都、岡崎慎司などが活躍。2018年ロシア大会では23 人中14人、2022年カタール大会では26人中16人。そして今回の大会では26人中 23人だった。 ・それぞれの大会での監督が誰だったかを重ねると面白いかもしれない。それ はさておき、ここまで海外組が増えた主な理由として考えられるのは、まずJ リーグのレベルが向上し、若い選手が欧州へ移籍しやすくなったこと。それに 伴い、 欧州クラブが日本人選手を高く評価するようになった。同時に、日本 人選手のフィジカルや戦術理解が世界基準に近づいたのも大きい。 また、日 本代表でも欧州トップリーグで実績を残した選手が中心となる流れが定着し た。初出場から約30年で日本サッカーの国際化が数字にはっきり表れている。 Jリーグが始まったのが1993年で、今年で33年経過し、この間のレベルアップ は非常に大きいものがある。始まったときに、ここまで日本にサッカーが根付 き、盛んになるとは思えなかった。 <日本サッカー協会の運営のたまもの> ・Jリーグの隆盛を招いたのは、日本サッカー協会の存在が何よりも大きい。J リーグは発足当初から大きなグランドデザインを描いてスタートした。J-1、 J-2、J-3のピラミッド組織があり、その下部組織に都道府県単位のサッカー協 会、大学生サッカー、高校サッカーなどがきれいに組織化されている。プロ、 アマの垣根も整然と整理されている。高校生から大学生など、有望な選手はア マチュアでもプロの試合に出場できる。ご存じのようにJリーグは入れ替え戦 があり、下位のチームは常に降格のリスクがある。京都サンガも過去には数 回、降格を味わった。また、3大カップがあり、Jリーグはリーグ戦だが、天 皇杯はアマ、プロを問わず予選を突破すれば本戦に出場できる。一発勝負なの で、たまにアマチュアの強豪チームがプロに勝つこともある。 ・Jリーグの細かい規則、規定は詳しく知らないが、ユニフォームへのスポン サー社名の表記から始まり、多くの細かいルールがある。競技場も一定規模が 求められ、どこかの知事がその建設費の分担をめぐってクレームをつけたこと もある。しかし、大きな流れとしては、ひとつの都道府県に最低1つのサッ カーチームを誕生させ、地元と一体になり地方を元気にするというミッション の元にサッカーチームを盛り上げる。サッカーと全く縁のなかった高齢のおば あちゃんが熱狂的な地元チームのサポーターに変身することも多い。チーム名 には必ずその土地、地域の名前を入れることも義務付けられている。あくまで も、地元と一体になって盛り上げるという理念のもとに組織が運営されてい る。その点、野球とは大違いだ。 ・野球は長い伝統があり、プロ野球は企業が基本的に親会社になっている。電 鉄、メディア、IT、自動車、電機など、一流でそうそうたる名だたる企業がス ポンサーだ。サッカーは、基本地元の企業がスポンサーだ。そういう意味で は、京都サンガは非常に恵まれている。ナショナルブランドの世界に名だたる 地元有名企業がスポンサーになっている。他のチームから見れば、垂涎の的だ ろう。任天堂、京セラ、オムロン、村田製作所などがメインスポンサーであ り、資金的には潤沢のはずだ。それにしては、以前毎年成績は低迷し、入れ替 え戦に出場し残留をかけて必死で戦っていた。投資効果の検証もあまりなかっ たか。ようやく、最近入れ替え戦の常連ではなくなり、やっと落ち着いてプ レーできる環境が整った。ようやく優勝争いに絡む位置になった。 <海外へ渡るシステムがある> ・それに引き換え、野球というスポーツの運営組織は、お粗末極まりない。プ ロ野球、社会人野球、高校野球、部活動の野球など、全国レベルで考えると、 それぞれがそれぞれで勝手にばらばらに組織運営を行い、サッカー協会のよう に組織の一元化ができていない。また、中学までは基本的に部活動だが、最近 では地域に少年野球クラブがあり、リトルリーグと称して中学生でも硬式野球 をやっている。最近プロで活躍している選手には、このリトルリーグ出身者が 多い。ばらばらで、組織は別々に活動し、春休み、夏休みなどの学校部活動 と、地域スポーツ活動との連携はあまりとれていない。大会日程が重なり、有 力チームが出場を辞退するというケースもある。会場手配、審判員の調達な ど、多くの苦労があり、一元化ができていない。 ・日本サッカーがここまで強くなったのは、日本サッカー協会の一元運営のも と、Jリーグを頂点とするピラミッドがうまく組織化されているからだ。Jリー グ発足から10年以上経過してから、海外に活躍の場を求めて多くのプレーヤー が海を渡った。その際にも、海外に在住するサッカー関係者が尽力し、海外の クラブ、チームとの移籍交渉などを担当し、特にヨーロッパのチームに移籍す る際の、道筋をつけた。いきなり、有名なメジャーチームとの契約には至らず とも、小国のプロリーグで腕を磨き、そこからドイツ、イギリスなどの有名メ ジャーから声がかかるように情報発信を行う。なにせ、野球と違いサッカー は、全世界で行われている最もメジャーなスポーツで、ヨーロッパ、北南米な ど各都市に多くのプロチームがある。 ・簡単に海を渡ると言っても、本人たちの苦労は半端ではない。異国の地に単 身乗り込み、言葉、食事、練習、おカネなど、心配事は尽きない。特に、言葉 の問題は大きいだろう。チームでのミーティング、コーチからのアドバイス、 チームメートとのコミュニケーションなど、言葉が理解できないと難しい。 サッカーは野球と異なり、いったん試合が始まると個々の選手が機能的に動か ないとチームにならない。戦術面の理解などは、言葉がわからないと話しにな らない。英語でもいいのだろうが、南米はスペイン語が主流だし、ヨーロッパ でも場所によってはフランス語、イタリア語が必要だ。某選手はイタリア語が 格段にうまく、少年時代からスペインに渡った選手はスペイン語でインタ ビューを流暢にこなす。若いとできるものだ。 <10年後は本気で期待できる> ・Jリーグが発足したときに、ここまでの隆盛をイメージできていたかは定か ではないが、当初から世界を意識して組織運営をしてきたことは間違いない。 その中でも、FIFA(国際サッカー連盟)という頂点組織があり、いろいろと批 判はあるものの、4年ごとに行われるワールドカップ(略称WC)が最高峰の大 会だ。今回の大会から、本戦に出場できるチーム数が32チームから48チームに 増えた。金権主義、金満主義という批判はあるものの、おカネを生み出すビジ ネスモデルとしてはよくできている。48チームが12グループに分かれて、グ ループリーグで72試合を行い、トーナメント戦に出場できる48チームを競い合 う。勝ち抜き方式のトーナメントでは、47試合が行われ合計120試合弱の試合 が行われる。入場料だけでも莫大だ。 ・放映権、グッズの売上、入場者が落とすおカネなどを考えると、オリンピッ クよりビジネスでは上位だろう。オリンピックはアマ、プロ混在するが、サッ カーのWCは、プロの世界大会だ。地域の予選から始まる2年越しの大きなイベ ントだ。ここで目立つ活躍をすると上位のチームからヘッドハンティングのオ ファーがかかる。サッカーは意外と簡単に国を、国境を超えて移籍が頻繁にあ る。どういうシステムになっているか定かには知らないが、全世界的なスポー ツなので、移籍、トレードなどの人材交流のやり方も全世界的に整っているの だろう。気が付けば、ある選手が欧州のリーグで活躍していると思ったら、翌 年には違う大陸のリーグで試合に出ている。現状でも、相当数の選手が海外で プレーしている。日本代表に入るだけでも大変だ。 ・あと10年もすれば、本当にWCで優勝を狙える力がつくだろう。今回は、いい 夢を見せてもらったが、現在の実力ではこれが精一杯か。前半の展開ではブラ ジルに一泡吹かせられるかもしれないと思ったが、さすがに役者が違った。世 界はまだまだ、そう甘くないと骨身に染みて感じた。この経験をどう次の世代 に活かすかが課題だ。頑張った、良かった、だけでは進歩がない。痛い目を味 わったからこそ、見える景色がある。組織が一丸となってフォーカスすれば、 もう少し上に行くのに、あまり長い時間は必要ないだろう。しかし、そこから の壁は途方もなく高く、分厚く、大きいが、目的が明確で、組織のすべてがそ こに向いていれば、そう難しいことではないはずだ。10年後の日本チームの雄 姿が見たいものだ。