**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第1157回配信分2026年06月29日発行 人手不足時代は常に中途採用を継続 〜新卒一括採用から通年中途採用へ〜 **************************************************** <はじめに> ・来春2027年3月に卒業予定の大学生の就職活動が今月初めから本格的に始 まった。始まったが、実際には多くの学生に既に内々定などが出ており、政府 が決めた公式の採用スケジュールは形骸化している。もともとは、3月に会社 説明会、6月に面接などの選考活動、正式な内定を10月、というのが一応の ルールだ。しかし、このルールを守っている大手企業はほとんどない。ルール は紳士協定で、法的拘束力や罰則規定はない。就職活動と授業、研究の時期が なるべく重ならないように、政府は就職活動解禁のルールを定めている。しか し、これを守る大手企業は全くないのに等しく、形骸化している。企業は少し でも優秀な学生を早く囲い込み、学生は多くの複数の内定を得て、そこから絞 り込む。内定の社数は採用予定数の5割増しくらいか。 ・それくらい出すのが普通になり、お互い疑心暗鬼になる。そもそも4回生の この時期に内定が決まっていない学生の方が少ないはずだ。逆に、内定が得ら れていない学生は、この時期から夏場にかけて、猛暑の中リクルートスーツに 身を包み、多くの企業を訪問する。従来から、早く内定を複数得る学生と、数 10社面接しても内定が取れない学生との二極分化が進んでいる。企業側も、こ のようなアンバランスをなくすため、通年採用という方式に変える企業も出て きた。中途採用も含め、年間いつでも採用活動をしている。京都府内の学生の 就職率は、2026年4月採用の学生で97.1%になり、過去最高を記録した。学生 主体の売り手市場は続いている。高卒者の空人倍率は5.56倍になり、以前の 「金の卵」という表現があてはまる。 ・従来の就職活動も、徐々に様変わりしている。学生側も、インターンシップ や企業見学、実習参加など、事前に企業側と接触する機会を多くもつようにし ている。現在大学3回生の学生が、この時期から就職活動を開始する。3回生 の6月は、2年間の教養課程を終えて、学部学生になった時点だ。部活や課外 活動の中心になる時期で、この時期から就職活動を行うのは、正直学生生活を 有意義に過ごすことへの障害になる。あるいは、アルバイトを多く経験し、少 しでも社会人生活に近づくことも必要だ。これら早期の就職活動が、その後の 3年で3割、5年で5割の退職につながっている。これらは企業活動に大きな ムダをもたらす。また、企業によっては新卒定期採用のみという企業も、いま だに多くある。特に、金融機関などは多い。 <面接でどこまでわかるか疑問> ・これらの学生意識、企業側の意識を変えない限り、この就職活動の「キツネ とタヌキの化かし合い」状態は改善しない。少子化が今後急速に進むわが国 で、このような就職活動のムダをなくす取り組みは急がれる。大手企業には採 用のチームがあり、人事部という組織もあるが、中小零細にはそういう機能は 組織の中にはない。わずかに総務担当の社員や代表者が面接したり、フォロー したりしているのが現状だ。中小零細で新卒採用をしている企業は少ないだろ う。ほとんどが中途採用のはずだ。逆に言えば、中小零細は当初から通年採用 をしている。欠員ができたり、急なニーズが起こったりしたときに、突発的に 採用をせざるを得ないのでしているケースが多い。中小企業で定期新卒採用が できるのは、50名以上くらい従業員が在籍する企業くらいか。 ・徹底的に中途採用だが、第二新卒ねらいで採用活動を行っている企業もあ る。第二新卒とは、定期新卒採用で入った企業とうまくいかなくて、3年から 5年経過して退職したほぼ新卒者に近い人たち。一応社会に出て、何らかの仕 事には就いたが、合わなくて退職した。社会人経験は短いとはいえ、一応あ る。社会人マナーも一通りは心得ているだろう。そういう意味では、即戦力に はならないが、一応ドラフト5位くらいの位置づけか。数か月から1年くらい の期間をおけば、現場でできるレベルになる可能性が高い。この第二新卒者ね らいの場合、他社を知っているので今回の企業との比較が容易にできる。前職 に比べて勤務時間が長いとか、休みが少ないとか、残業が多いようだとか、何 かと比較する材料に事欠かない。なので、条件提示には苦労する。 ・むしろ面接側の経験、力量、人間性、質問力などが問われる。簡易作業担当 者の採用だから、簡単な面接で済まそうとしてはいけない。いくら簡単な軽作 業といっても、中小企業では中途採用には何らかの形で必ず代表者は関わるべ きだ。最後の面接だけでも立ち会う。新しい採用者の顔を見ておくだけでもい い。採用可否の判断は現場に任せるものの、人物は必ず一度会っておく。大企 業の人事部でも、採用のミスマッチは大いにある。まして、採用を片手間で やっている中小企業では、採用のミスマッチは日常茶飯事だ。応募する側も疑 心暗鬼だ。聞いたこともない社名の中小企業では、いくら事前に情報が多く あっても、やはり不安は隠せない。ホームページを見ても、どうも仕事がピン と来ない。本当にここで自分はやっていけるのだろうか。 <人材は通年募集で> ・中小企業では、採用方針をはっきりしておく必要がある。まず、当面(どれ くらいの期間かは別にして)新卒採用をするのか、しないのか。しないなら、 しないで中途採用一本で行くので、そのやり方をおおよそ決めておく必要があ る。特に、面接の方法、内容、評価の仕方、決定の過程、本人への通知など だ。断る場合のやり方も決めておく。断る場合は、縁がなかったということ で、丁重に扱う。特に、一般消費財を扱う企業では、その人がどこで、いつ、 お客さんになるか分からない。ケースバイケースもあり得るが、おおよその流 れは決めておく。採用フローを簡単な文書で残しておく。特に、留意するのは 条件の決め方だ。給与の内容に関しては、中小企業ではルールがあってないよ うなものだ。その人の前職の給与にも大いに影響される。 ・むしろ大事なのは、入社当日からの流れだ。成岡も、転職は数回経験してい る。製造業から出版社、出版社から印刷会社、印刷会社から人材採用のベン チャー企業。特に、最後の印刷会社を依願退職してから、ベンチャー企業の人 材採用コンサルティング企業に転職した際には、相当とまどった。50歳近い年 齢、過去のキャリア、報酬の交渉、担当する業務など、以前の経験は全く通用 しないと覚悟した。また、その企業が平均年齢28歳、平均勤続2年という、い わばフレッシュな?ベンチャー企業だった。この企業での採用からオリエン テーション、受け入れ教育、現場配属までの流れは非常に勉強になった。生業 が人材採用のコンサルティングだから当然と言えば当然だが、それまでの経験 では到底思い浮かばないプロセスだった。 ・採用から入社、受け入れ、配属までは非常に手厚い。ほとんどが高学歴で、 大手企業の経験者だ。金融機関、証券生保、製造業など外資系企業経験者も多 かった。しかし、採用者にいくら手厚く受け入れをしても、数年で転職する人 が大半だった。より、上位のタレント、キャリアを求めて転職していく。なの で、平均勤続が短い。逆に、出戻もあり得た。数年で他社に転職し、どうも 違ったということで、出戻ってきた人も数名いた。出入りに関してはオープン だった。そういう企業文化に徹していた。代表者や数名の役員が全員当時のリ クルート出身者だったということもあるだろう。入る際には手厚く、入社後は 能力次第。そういうポリシーが徹底していた。企業文化に合わない場合は、早 期の退職が多かった。毎月、数名の入社、退社があった。総勢70名くらいだっ た。 <新卒一括採用はもう古い> ・中小零細企業では、そうはいかない。募集しても応募がないことが大半だ。 誰か欠員ができても、簡単に次の人が見つかるわけではない。特に、人数が少 ないだろうから、1名の欠員でも周囲に与える影響は大きい。補充ができて も、前任者と同等のレベルまで行くのに時間がかかる。かといって、余剰の人 員を贅沢にかかえる余裕はない。欠員ができる、できた理由にも依る。前任者 のケガ、病気、事故での補充が一番急がれる。ここで慌てて採用作業を短兵急 に行って、ミスマッチの採用をしてしまい、その後トラブルを抱えることにな るケースも多い。適切、適当な人材が補充できるまで、周囲の人、代表者など が総出でカバーする。そうすると、以前の作業のムダも見えてくる。仕事の流 れや、やり方を変えるにはいいチャンスだ。 ・女性社員の寿退職の補充も、1名欠員ができるからと簡単に考えて、安易に 補充しないことだ。後任も簡単に見つからないから、一度補充なしでやってみ てはどうか。退職した人の仕事を全部書き出し、分解し、期日、内容、難易度 などを分析してみる。意外と、従前からの慣習などで惰性的にやっている業務 も多い。寿退職などの機会をとらえて、業務の棚卸を行い、思い切ってやめ る、改善することのチャンスととらえるべきだろう。そういう機会 でないと、業務改善などは掛け声だけになる。大企業は日常、そういう業務の 見直しなどが頻繁にあるが、中小企業では日常少人数で流れている業務を変え るのは、なかなか難しい。こういう人員の移動があったときに大胆に変えるの がいいチャンスだ。これも、代表者の覚悟ひとつだが。 ・総じて、今後人手不足が明らかなので、大企業、中小企業に関わらず採用活 動は通年で行うことだ。そして、人材は新卒定期という既成概念を変えること だ。現在の給与体系が崩れるとの懸念があるが、そもそも現在の日本の年功序 列、終身雇用の給与体系は、もうとっくに崩れている。給与制度、賞与支給の ありかた、退職金制度などは、戦後の社会体制の中で生まれてきた。人は増え る、経済は成長する、という前提での話しだ。いまや、転職が当たり前の時代 になった。そういう時代に、ルールを守って新卒定期採用に固執するのは、い かがなものか。人材採用をもっと柔軟に考えるべきだ。海外からもっと人が 入ってくる、増える、多国籍化する時代になりつつある。大企業から30年くら い遅れて中小企業もそうなる。年から年中中途採用をしている時代になった。