**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第1155回配信分2026年06月15日発行 積極財政は世界から信用されていない 〜円安が止まらないのは明確な理由がある〜 **************************************************** <はじめに> ・飲食業ワタミの経営者で国会議員も経験した渡邉氏が最近語ったコメントが 話題を呼んでいる。日本の財政の危うさを端的に言い当てて、核心をついてい る。業界は飲食業界なので、原材料の影響と、包装資材の枯渇、消費者の動向 がリアルタイムでわかる。原材料費の高騰で商品やサービスの値段を上げる と、客数と売り上げが減り、経営が苦しいという苦情が多く寄せられている。 同氏は、物価高倒産は今後増えると予想している。消費者市場の中でも選ばれ る店、選ばれない店で分かれていく。物価高で外食の回数を控える動きも出る だろうが、付加価値をつけて選ばれる店になるしか生き残る道はない。人口減 少で、ただでさえ市場が縮小する可能性が高い。いくらインバウンド外国人観 光客が増えても、最大でもいまのところ年間5000万人だ。 ・最近、国債の長期金利の上昇が急ピッチだが、これは世界からの日本の財政 不安への警告だ。世界が日本の積極財政を心配し始めている。5月にトランプ 氏の中国訪問に先立ち、米国の財務長官が来日した。高市首相や片山財務相と の会談内容は明かされていないが、表敬訪問のはずがなく、わざわざ中国訪問 の前に立ち寄ったのは、最近の日本国債の長期金利の急上昇について、「日本 国債は本当に大丈夫か」と懸念に近いことを言いに立ち寄ったと思われる。 OECD(経済協力開発機構)の事務総長も先日来日した際、食料品の消費税ゼロ を「荒っぽい対応だ」と指摘した。OECDの対日経済審査報告には、消費税率の 段階的引き上げを提言し、最大18%とする試算も例示し、少子高齢化に対応す る財源の確保を促した。しかし、一般にはあまり伝わっていない。 ・さらに、政府の経済財政諮問会議に招かれた元国際通貨基金(IMF)のチー フエコノミストからは、積極財政、食料品の消費税減税、日銀への圧力などに ついて全否定的な意見が飛び出した。曰く、「危機管理投資は重要だが、明確 な財政的収益が見込めない。成長を押し上げるかもしれないし、そうでないか もしれない。それだけを根拠に国債を投資資金の財源とすることを正当化でき ない」と、高市首相に苦言を呈した。いずれも日本の政治家の選挙目当ての人 気取り政策に、「世界がいい加減にしろ」と言い出した格好だ。基礎的財政収 支(プライマリーバランス)ゼロを目指せば、中長期的には国の借金への信認 もなんとか保てるという考えもあった。しかし増税も歳出削減もしないとなる と、日本国債への信用は保てない。どうするのか。 <日本は大幅な債務超過> ・OECD加盟国の消費税(付加価値税)の平均は19%だ。日本は増税どころが、 減税すると与野党がいっている。法人税を上げると企業が海外に逃避する。所 得税を上げると労働意欲をなくすことから消費税しかないと思うが、日本の政 治家はそれを口にすると、選挙に不利だから決して言わない。海外からの辛口 のコメントは、国債や円の暴落で日本が金融危機やハイパーインフレを引き起 こしたら、その影響が米国や世界に波及するのを心配している。この意見は真 摯に受け止めるべきではないか。日本円の暴落など想像もしたくないが、昨今 の円安、長期金利などを考えると、あながち絵空事でもない。株価だけが異常 に高騰しているのが、非常に気持ち悪い。期待値だけで上昇しているのなら、 いずれ近いうちに暴落する可能性がある。 ・もし、円が暴落したらどれだけの企業が生き残れるか。2070年に人口が1億 人を切ると言われているが、それまでにパニックが来るかもしれない。そこで 多くの企業、中小企業が淘汰の試練に直面する。今後も悪いインフレが続くと 仮定して、その中で顧客や市場から選ばれるため、地域で一番、市場で一番の 企業になることをとことん意識して、円の大暴落の際は、「何としても生き残 る」ための意志を持たないといけない。高市首相は「減税をする、補正予算を 検討する、でも、赤字国債は抑制する」というが、そんな魔法のような計画 に、世界から注文がつきはじめている。そもそも日本の財政は、国としては破 綻している。個人資産があるから、全体としては何とかバランスを保っている が、非常に危うい状態であることに間違いない。 ・企業経営で言えば、法人の財務内容は大幅な債務超過だ。借入金が収入の10 倍以上ある。売上が1億円の中小企業なら、有利子負債が10億円以上ある。し かし、社長の個人資産は借入金以上ある。自宅も大きい。当然担保に入ってい る。個人保証もしているから、金融機関は融資の保全は図られていると思って いる。個人資産を加味すれば、法人の財政は何とか均衡を保っているが、現金 以外の個人資産、土地や建物、株式などの評価が下がれば、実態は債務超過に なるかもしれない。また、長期金利がどんどんあがると国債の信用が低下す る。為替もさらに円安に振れる可能性が高い。現在160円のレートが200円近く に低下する可能性もある。税収も国債でカバーできなくなるかもしれない。こ ういう金融危機が絶対起こらないという保証はない。 <このままで大丈夫か?> ・日本の現在の政治体制では、これらの不都合な真実、現実、想定される未来 を正直に語る政治家はいない。政党のいい、悪い、好き嫌いに関係なく、日本 国の10年先、20年先を憂いて、いま、真実を語り、ネガティブな話しを積極的 にする政治家は、ほぼ皆無だ。我々も、もっと自己の利益に執着せず、大所高 所を考えないといけない。今のままの人口減少でいくなら、消費税は10%では 持たないことは誰もが暗黙に分かっている。近い将来、12%に上がり、15%に 上がり、最終は20%くらいになるだろう。社会保障の仕組みも変えないといけ ない。過疎の地方が増え、インフラの老朽化は進み、田舎暮らしが難しくな る。ある程度、人の住む、住める地域を決めて、その周辺にインフラを集中す る必要がある。分散した田んぼでは、コメ作りコストが合わない。 ・少子化、高齢化が進み、人口減少がわかっているにもかかわらず、社会保険 負担はどんどん増加する。働ける世代の人数は減少し、いずれこのままなら健 康保険、年金などの社会保険制度は立ちいかなくなる。食料品にかける消費税 を2年間暫定的にゼロ(または1%か)にして、低所得者層に給付型の支援を 行うという選挙公約を実行することは、間違いとは言えないかもしれないが、 ある意味「焼け石に水」ではないか。また、2年後に大騒動をして食料品の消 費税を8%に戻すのか。よく考えれば、あまり効果が期待できないプランでは ないか。近い将来、消費税も10%で維持できなくなるなら、ここで2年間多額 の費用とエネルギーをかけてゼロ(あるいは1%か)にする意味はどこにある のだろうか。冷静に考え直すべきではないか。 ・諸外国からの日本経済の行く末の評価は厳しい。逆に、株価が高騰(暴騰で はないか)しているのが心配だ。この株高であぶく銭をゲットした高額所得者 は、いったい何におカネを使うのだろうか。消費に回って、その効果で経済が 好転するのならまだいいが、どうもそうはならない。高額所得者と、一般庶民 との格差が拡がる可能性が高い。アメリカ社会の様に、分断が進むだろう。半 導体産業一強の経済構造では、非常に危うい。農業も就農従事者の高齢化が止 まらない。あと数年したら、農家はほとんどが70歳以上、さらに5年したら全 員後期高齢者になりかねない。食糧安保の掛け声はいいが、一向に一次産業従 事者の人数は増えない。増えないどころか、減って行くのが現実だ。誰もこの 流れを変える力がない。政治家も政治も無力だ。 <経営者が覚悟を固める> ・足りないおカネの穴埋めを国債、つまり国の借金で賄っているうちは、海外 からの信用は上がらない。どんどん円安が進み、輸出で儲けている企業のみが 潤う。原材料の大半を海上輸送で輸入し、食料品の60%を海外から調達してい る日本国で、この為替レートは非常に厳しい。円という通貨の信用が落ちてい るから、この為替レートになる。国の財政のバランスシートが崩れている。そ れも、極端に崩れている。それを海外の投資家が冷静に評価して、円の通貨と しての信用が落ちている。為替レートの維持に、水面下で最近為替介入を行 い、11兆円という膨大な国費が投入された。それでも、しばらく円レートは 155円くらいに上昇したが、またすぐ160円近くまで下落した。一時的な為替介 入は焼け石に水だということが明白になった。 ・企業でいえば再生局面に入っている。売上は当然なかなか伸びない。その中 で何とか経営を立て直すなら、まず支出=歳出を減らす努力をしないといけな い。以前、在籍した再生支援協議会のフレーズで言えば、「小さな洋服に身体 を合わす」ことだ。つまり、体重や皮下脂肪を落としてスリムになることだ。 ここで大事なことは、体重を落としても筋肉は落とさない。余分な脂肪を削ぐ ことだ。そのためにどうするかを真剣に考える。ベンツを売って、軽自動車に 買い替える。ムダな交際費を縮小する。実態のない非常勤役員の奥さんを辞め てもらう。不良在庫を処分して、余分な倉庫代を削減する。考えれば、いくら でもプランは出てくるはずだ。まず、トップがそれを断行するという覚悟を明 確に持つことだ。途中で腰砕けにならないようにする。 ・嫌なこと、言いたくないこと、格好悪いこと、不細工なこと、そういうこと を気にしない。なりふり構わず、いいと思ったことはすぐに実行する。ちょっ と待てよ、と考えない。直感で、これはやるべしと思ったことは、断固実行す る。もう少し検討してからという言い訳は通用しない。誰も、厳しい、嫌な、 耳障りの悪いことは言ってこない。自分で決めて、自分で言い聞かせて、自分 で退路を断って、実行する。党利党略、自己の保身、選挙の結果などを先に考 えない。損得ではなく、正しいか、間違っているかで判断する。判断の基準、 座標軸を自分で決める。勝手に自分の都合でゴールポストを動かさない。正し いことを粛々と正しくやる。そうしないと、このままでは円の大暴落が起こら ないとも限らない。起こってからでは遅い。