**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第1153回配信分2026年06月01日発行 ナフサ由来の製品の欠乏は現実 〜多くの小規模事業者の経営に大きな影響が懸念〜 **************************************************** <はじめに> ・日本国の首相は相当脳天気か。あるいは、霞が関の官僚が挙げてくる実態レ ポートをわざと無視して、平時を装っているのか。中東戦争の影響が長引き、 ホルムズ海峡の封鎖が継続している現在、原油や物資の輸入が滞り、現場は相 当深刻な事態になりつつある。イランとアメリカの紛争は5月連休明けまでは 続き、その後収束に向かうと小職は予想していたのだが、この見通しは見事に 裏切られた。トランプ氏のご機嫌も直らないまま、交渉は暗礁に乗り上げ、腹 の探り合いが続き、一向に出口が見えない。パキスタンの仲介も、いろいろな 思惑が絡んで、遅々として進まない。数隻のタンカーや輸送船がホルムズ海峡 を通過したが、焼け石に水だ。この場に及んで、わが国がいかに海外からの物 資の調達を海上輸送に依存していたか、思い知らされた。 ・我が国初の女性首相は、満面の笑みで愛嬌を振りまき、同盟国のトップには 受けがいい。あれだけ作り笑いを日常続けていると疲れるだろうと、心配にな る。ストレスがたまって、独りになった時間では愛煙家だからタバコをむやみ たらと吸うらしい。夜も、ほとんど付き合いの会食もなく、ある休日は全く来 客もなく、人とも会わない(新聞の首相動静に依れば)。資料の読み込みに集 中しているのかもしれないが、トップはスタッフをいかに上手に使うかが仕事 だ。我流も悪くないが、官僚をフル稼働させて、現場の実態を掴むことが大事 ではないか。本当に現場のことをご存じないのだろうか。役人も伝聞ではな く、実際の現場のなまの声を聴くべきだ。会議室でヒアリングしましたで、お 茶を濁してはいけない。厳しい現場の声を真摯に受け止める。 ・原油由来の、特にナフサ関連の製品の不足感は相当なものだ。つい最近も、 家内の買い物に同行し大きなスーパーに出向いたが、アルミホイルやラップの 棚は欠品で空間が目立った。小さなカードに、「商品が欠品しており入荷の見 通しがわかりません」とメッセージが書いてあった。「流通の目詰まり」と新 聞やTVなどから伝わるが、日常生活的では「流通の目詰まり」と言われてもピ ンと来ない。それくらい、多くの物資、資材、製品は、原材料の調達から始ま り、メーカーでの製品への製造、物流、流通倉庫でのストック、一次流通事業 者、二次流通事業者、卸売事業者などの複雑な流通経路を経て、最終の販売店 や使用者に届けられる。原材料の輸入から始まると、数か月の長きにわたるサ プライチェーンが構築されている。結構複雑怪奇だ。 <現場ではあらゆる知恵を絞っている> ・あらゆる物資、資材、製品が原油由来であることに気が付いたが、特に今回 顕著に影響が表れているのは、食品トレーやラップ、プラスチック袋といった 包装資材だ。軒並み値上がりし、入荷も不安定になっている。スーパーでは弁 当をラップで包むのをやめ輪ゴムに切り替え、パン屋では「袋を持参してもら うことも考えなければ」という声まで上がっている。某食品スーパーは、新鮮 な食材に加え、手作りの総菜や弁当を主力商品とする地域密着型のスーパー だ。おいしいことで有名だが、日々の営業に欠かせないのが、食品トレーや ラップなどの包装資材だ。いくらおいしい、評判の総菜やお弁当を作っても、 包めないと消費者に渡せない。食品は鮮度が命だから、包装資材がないと商売 にならない。店頭に並べることができない。 ・さらに深刻なのが、価格の問題だけではないことだ。注文すれば翌週には届 いていたレジ袋が、4月20日ごろに発注したにもかかわらず、いまだに入荷し ていない状況が続いており、在庫でやりくりしているという。次にいつ入荷で きるかも不透明だという。それでも、商品への価格転嫁は極力避けたいという 店側の姿勢は変わらない。前述のスーパーの女性経営者は、「原材料が上がっ て商品が値上げになるなら仕方がない。食べられないもので値段を上げるの は、お客さまに対して申し訳ない気持ちでいっぱい。今のところは値段を上げ ずに頑張ろうと思う」。この切ない思いがどこまで通じるか、我慢できるか。 店側も、赤字の垂れ流しでは経営が成り立たない。赤字の連続では手元の現金 がどんどん出ていく。当面の休業や閉店という悪夢が想定される。 ・こういった声は、現場に出ればすぐにわかる。TVの朝や昼のワイドショーで はないが、より消費者に近い現場で実際に起こっている事象、現象をつぶさに みればわかるはずだ。東大を出て官庁に入り、役人の世界しか知らない頭でっ かちの人には、少々つかみにくいかもしれないが、現場に精通している人の話 しは重要だ。何が、現場で起こっているのか。今回、中東ショックの初期段階 で政府の発信したメッセージは最悪だった。官房長官が「オイルショックの再 現ではない」と発信した。それはそれで間違いではないかもしれないが、それ が疑心暗鬼を呼んだ。在庫はあると叫んでも、政府の言うことは信用できない との憶測を招いた。さらに見込み発注につながり、買いだめに発展し、出荷制 限などの事態を招いた。情報発信の失敗だ。 <どこかで目詰まりを起こしている> ・1日3000枚の袋を使う街の小さなパン屋さんにも、30%値上がりの予告が 続々と届いている。某市の老舗のパン屋さんは、サンドイッチや総菜パンの品 ぞろえが豊富で、個包装の商品が多い。1日に使用するプラスチック製包装袋 は約3000枚にのぼる。包装資材を扱う事業者からは、4月上旬にはすでに値上 げの連絡が届いていた。「どの袋もこれから30%ぐらい値上がりする。そもそ も発注しようとしてもなかなか手に入らない状況になる」。かなり厳しい現状 というのが率直な感想だ。包装袋にとどまらず、従業員が使う薄手のゴム手袋 の価格が1.5倍以上に値上がりする可能性があり、すでに入手困難な状況が続 いている。こうした状況を受け、店側では衛生管理に細心の注意を払いつつ も、苦しい判断を迫られている。 ・使用者、消費者の立場としては、資材がないので商売に支障を来しては困る ので、どうしても多目にストックを持とうとする。そうすると発注量が、通常 の2倍になる。いわゆる、買いだめだ。卸売り事業者は、その買いだめニーズ に対応しようとするので、製造メーカーや一次問屋に大量の発注をかける。一 部の製品には既に出荷制限の通知を出しているから、中間事業者は余計に発注 量を増やす。また、これに対応するため、メーカーでの在庫を持とうとする。 通常なら、例えば1か月分くらいの在庫で回すのが、それぞれ2か月分、3か 月分持とうとするから、あらゆる場所で物資の不足と余剰ストックの買い置き が起こる。これが一気に起こったから、「流通が目詰まり」になった。これが 実態だろう。足りないのではなく、止まっているのだ。 ・昭和の時代を思い起こさせる「容器持参」という文化が、資材不足という形 で現代に舞い戻ってくる可能性も冗談ではなくなるかもしれない。中東情勢と いう遠い地での出来事が、スーパーやパン屋の店頭に確実に影響を及ぼしてい る。弁当の包み方を変え、手袋の使い方を工夫し、それでも価格を据え置こう と踏ん張る店主たちの姿は、地域の日常を守ろうとする静かな奮闘だ。在庫が いつ底をつくか、次の発注分がいつ届くか、先の見えない状況の中で、小規模 店舗の「戦い」は続いている。いつまでもつか。我慢比べか。それでも、流通 の目詰まりはないと断言できるか。どこに製品が滞留しているのか。本当に流 通在庫はないのか、足りないのか。疑心暗鬼になって、オイルショックのとき に起こったトイレットペーパーの買いだめ騒ぎにならないか。 <これを機会に自社のビジネスモデルの見直しを> ・原油の備蓄はある、製品は心配ない、流通のどこかの段階にある、目詰まり が問題だ。これが現在の政府の見解だが、本当にそうか。昨年のコメ騒動のと きも同じ見解だった。おコメはあり、どこかの流通段階で滞留しているのだと の見解だった。しかし、実際おコメは足りなかった。今回の問題は、もっと複 雑だ。これほど多くのモノが石油由来、原油由来、ナフサ由来だったとは知ら なかった。小職は、もともと化学系の出身者で、かつ、1973年の第一次オイル ショックを経験しているので、これが長引くと危ないとは感じていた。問題は アメリカとイランとの交渉、意地の張り合いだ。誰かが仲介し、双方を説得 し、落としどころを用意し、合意に結びつけないといけない。政治は商売で、 取引だと自認するトランプ氏を抑え込まないといけない。 ・EUの一部の国の首相は敢然とトランプ氏にNOを突き付けた。自国からのアメ リカ軍の発出、自国領空の通過を認めなかった。すぐにしっぺ返しが来たが、 敢然と対立している。矜持がある。それに引き換え、わが日本国の首相は心も とない。アメリカに媚びを売り、隣人韓国トップと同じようにドラムをたた く。中国には強面で相対する。中国からレアアースが入ってこなくなると、現 在活況の半導体業界も大きなダメージを受ける。いくら海底を掘って泥の中か らレアアースを取り出すことに成功しても、莫大なコスト負担は避けられな い。まず、ビジネスとして成り立たない。膨大な設備投資に対する金利負担 は、今後どんどん増える。超長期の設備投資は、かなりのリスクを伴う。30年 先の北陸新幹線延伸も、採算は難しいだろう。 ・この中東戦争を契機に、人口減少で悩むわが日本国の未来を、もう一度再検 討したほうがいい。いかにしてうまく縮小するか、縮減するか。今まであまり 深刻に考えずに、どんどん経済規模は大きくなり、年度の予算も膨張した。し かし、これほどの人口減少が続くなら、どこかで方向転換しないといけない。 6年前のコロナも相当なショックだったが、今回の中東戦争もその契機になら ないか。第一次オイルショックの後は、官民こぞって省エネ技術の深化に邁進 した。中東での紛争が、今回仮に収束しても、またぞろ起こらないという保証 はない。原油も、レアアースも、食糧も、ほとんどの原材料と資源を他国から の海上輸送の輸入に依存するなら、これを契機に社会の構造、あり方を見直し た方がいい。自社のビジネスモデルの点検をするいい機会だ。