**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第1151回配信分2026年05月18日発行 経営者は教養を積むことを心がける 〜リーダーシップの確立は教養から来る自身の生き様から〜 **************************************************** <はじめに> ・経営者は組織のリーダーでないといけない。どんなに人数が多い組織でも、 少ない組織でも、経営者は組織のトップを務めるからには、いつ、どんな時で も、組織のリーダーとしての言動が必要だ。行動と発言だ。24時間365日緊張 感満載で、少しも緩んではいけない。誰がどこで見ているかわからない。なの で、個人に戻って、ほっとできるのは風呂とトイレの中くらいか。かの戦国武 将の武田信玄は、トイレ(当時は厠、雪隠と言った。武田の城では「山」と呼 んでいた)の時間が異常に長かったそうだ。そこでしか独りになれない。独り でモノを考えるのは、トイレが最適だ。それくらい、経営者は孤独に打ち勝た ないといけない。そして、どんな状況でもリーダーシップを発揮するには、ど うすればいいか。昔からの永遠の課題だろう。 ・リーダーシップを発揮するためには、次の3つ。まず、組織が行くべき方向 を明らかにする。どこに向かおうとしているのか。目的地はどこか。目的地が はっきりすると、その過程もおおよそ見えてくる。しかし、これが言うほどそ う簡単なことではない。会社が置かれている環境は、大きく変わる。昨今で は、激変する。その都度、行くべき方向が180度変わると大変だ。数字の目標 は変わっても、到達点は変わらないほうがわかりやすい。環境は激変するが、 目的地は同じが好ましい。次は、率先垂範、行動で示すことだ。何をすればい いのか、見本や手本で示すことだ。中小企業の経営者は結構これはできてい る。最後は、結果を出すことだ。頑張りましたは、経営者としては通らない。 周囲も納得しない。結果が出ないといけない。 ・そのためには、どうすればいいか。順風満帆に事業が営まれる期間は比較的 短い。むしろ、厳しい、過酷な環境の方が長いだろう。予期せぬ事変も起き る。天変地異もある。自分自身の責任範疇ではないところで、大きな出来事が 起こる。また、経営者自身の家庭環境や身体の変化も起こる。常に経営に集中 できるならまだしも、年齢を経ると、どこかに何か支障が起こることも多い。 家族の状態、自身の健康、その他会社経営と一見関係がないことでも、意外と 経営者自身のメンタルに影響がある。これらすべてを完璧にコントロールする のは難しい。身体も、どこか一部、一か所でも痛い、おかしいと、それがずっ と気になり集中できない。かと言って、常に万全であることも難しい。メンタ ルとフィジカルのバランスも大事だ。 <経営者としての教養を身につける> ・正解はないし、誰もそれを教えてくれるわけではない。学校の様に、教師が いて、授業で問題の解き方を教えてくれるわけではない。予備校に真面目に通 えば、希望校に合格するものでもない。いままで多くの経営者の方とお目にか かってきたが、規模に関係なく立派な経営者の方には、哲学がある。経営とは 商売やカネ儲けの技術論ではなく、人の生き方そのものだと感じる。正解がな い中で、自ら問いを立て、正解を作らなければならない。意思決定そのもの に、経営者自身の考え方や、生き方そのものがそのまま反映される。 世界的 な経営学者として知られた野中郁次郎さんも著書の中で、「経営とは生き方」 だと断じている。逆に言えば、生き方の軸が定まっていない人は、組織の経営 を担うのは難しい。 ・では、自分自身の生き方を確立するためには何が必要か。ひとつの答えとし て、真の意味での「教養」を身につけることだろう。書店には「ビジネスマン が身につけるべき教養」といった書籍が並んでいる。しかし教養は、出世する ための道具ではない。本来は、「人がよりよく生きるための指針」となるもの のはずだ。教養を身につけるとは、「いかに生きるのか?」という軸を、自分 自身の中に養うことだ。この「心の体幹」こそが、不確実性の高い環境で意思 決定を行うベースとなるに違いない。日々のトレーニング、鍛錬で身体の体幹 が鍛えられていくように、心の体幹もまた、日々「いかに生きるか」を考え、 実践を続ける中で鍛えられていくのだろう。こういう気持ちをどうしたらもち 続けられるか。永遠の課題だ。 ・その出発点となるのが、自分を取り巻く「殻(枠組み)」を自覚すること だ。私たちの周りには、心の中にある偏見やバイアスといった「内側の殻」 (心の内面)と、社会環境や慣習といった「外側の殻」(外部環境)の2つが ある。 たとえば、アメリカが人種差別という社会問題を、公民権運動から60 年以上たった今でも乗り越えられていないように、「自分は差別主義者ではな い」と思っていても、社会システムそのものの中に、差別を助長する仕組みが 組み込まれているかもしれない。 まず自分が社会のどこに、どの位置に立っ ているのかを自覚することだ。そのうえで、自分自身の心の中にある内側の殻 を打ち破り、自己を解体することができるか。既成概念や先入観を排除するこ とができるか。そうすることで初めて、教養が身につく。 <座右の銘、歴史の勉強、読書> ・現在と異なる環境に身を置くと、自然と学習する意欲が湧いてくるはずだ。 必ず周囲にお手本となる、師匠となるべき存在がある。先代の経営者でもいい し、先輩の経営者でもいい。馴染の居酒屋で愚痴を聞いてもらえる人ではな い。それは居酒屋の女将さんでいい。聞いてもらって気持ちが楽になればそれ でいい。しかし、もうワンランクレベルアップするには、手本となる存在が要 る。その手本となる存在から、どうやって教養を身につけるかを教えてもらえ ばいい。その通りする必要はないが、何らかの参考になるアドバイスはあるだ ろう。できれば複数の手本があれば、なおいい。違う角度、異なる経験からの 示唆は非常に意味がある。どうやってその人が教養を身につけたかを教えても らう。まず、師匠をゲットすることだ。 ・座右の銘となるような言葉、書籍なども、教養を身につけるために必要だ。 いろいろな情報が溢れかえる現代で、自分を見失わないように、迷ったときに は戻れる原点となる書いたものを、いつも手に取れる場所に置いておく。よ く、スポーツ選手が色紙に目標や元気が出る言葉を書いたものを壁にかけてお くことがある。それと同じだ。有名な、著名な尊敬できる経営者の言葉でもい い。人から借りてきた言葉でも、呪文のように何回も唱えているうちに、自然 と身につくものだ。気に入った言葉は、聞いた瞬間に、ピンとくる。ピンと来 ない言葉は、何回聞いても覚えられない。ところが、迷いがあり、悩みがあ り、悶々としていると、何か答えを探していると、聞いた途端に、「これだ !」と閃くはずだ。常に探し続ける姿勢が大事だ。 ・歴史の勉強も役に立つ。教養を身につけるには、歴史を勉強すればいい。戦 国武将の歴史、現代史、世界史など、多くの歴史から学ぶ教訓は膨大にある。 最近、一時徳川家康に凝って、山岡荘八の大作全26巻を2回読破した。初回 は、面白いというだけだったが、2回目は多くの場面で参考になる箇所が山ほ どあった。また、明治維新ものでは司馬遼太郎の著作がいい。特に、明治維新 の近代国家に生まれ変わる頃の人物が主人公になっている作品には、多くのド ラマがあり、体制の転換や変革があり、諸外国との交渉があり、非常に面白 い。武士の組織が一気に瓦解し、多くの武士が失職し、廃藩置県があり、西洋 文明の導入があった。過渡期には多くの紛争、軋轢、きしみがあり、多くの人 が艱難辛苦をなめた。それらを読めば、何らかの参考になる。 <教養は器量を磨くため> ・教養を身につけるのを、勉強と思うと心が動かない。自分自身のレベルアッ プを図るのだと思えばいい。経営者としての器量を磨くためだ。それが、社業 の発展につながり、リーダーシップの醸成につながり、会社全体の成長につな がる。自身の成長が止まれば、会社の、組織の成長も止まるはずだ。ゆっくり でも、確実に後戻りしないように階段を一歩ずつでも登っていくには、教養を 身に着ける努力を怠らないことだ。会社は経営者の器量以上にはならない。 縦、横、深さの3つの寸法をどう伸ばすか。まず、自分自身で、縦、横、深さ とは何を指すのか、それをきちんと定義づけることだ。縦が教養なら、横は経 営能力、深さは人格か。それぞれを、いつも均等に伸ばすのは難しい。年齢の 段階でも、それぞれ異なるだろう。 ・30代、40代、50代、60代でそれぞれのステージ、それぞれの環境で、どう チャレンジするのか。最近の言葉では、リスキリングという流行語もあるが、 少し意味は違うだろう。そういう気持ちをどう持ち続けるのかも課題だ。すべ てうまく運ぶわけではない。野球の打率ではないが、3割打てれば大打者だ。 10チャレンジして、3つものになればいいか。成岡も、以前多くの資格試験に 挑戦したが、3回チャレンジしてダメだったものは、きっぱり諦めた。自分に 向いていないと割り切った。その代わり、これと決めたものはとことんこだ わった。その結果、新しい環境も生まれたし、多くの人脈もできた。資格と教 養は別物だろうが、自分自身で納得していれば、特に区別して考える必要はな い。要は、気持ちの持ちよう次第だ。 ・教養を身につけると、経営者のリーダーシップの質が変わるはずだ。難しい のは、組織の中で、経営者というトップの位置になると、誰もそういうことを 親身に教えてくれない。自分自身で、もがいて、悩んで、試行錯誤する。結果 が出るものもあれば、出ないものもある。数字でわかるものもあれば、数字で は推し量れないものも多い。何が、結果で、何が原因かもわからない場合もあ る。むしろ、わかることのほうが少ない。しかし、常に求める努力をし続けな いといけない。時期的に、少し気持ちが緩む間もあるだろうが、そういう時期 は自分で緩んでいると自覚することだ。そして、毎日、毎週、毎月、季節ご と、年度ごとのルーティンを決めておく。基準がないと、ずれているのかわか らない。自分自身の物差しを持つことだ。