**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第1148回配信分2026年04月27日発行 最近の新入社員事情 〜新しい職場での人間関係が最大の悩みか〜 **************************************************** <はじめに> ・4月も下旬になり、連休が目前に迫ってきた。この時期、4月から学卒新入 社員は慣れない生活に相当お疲れのはずだ。以前は「5月病」というキーワー ドまであったが、現在は死語だろうか。4月から新生活に入り、気疲れが重な り、この時期相当ストレスが貯まっている人が多い。月末に初めての初任給を もらい、その手取り額の少なさに愕然とする。さらに、連休で久しぶりに郷里 や実家に帰り、家族や友人との楽しい時間を過ごす。そこで、新しい会社はど うだ、新生活はうまくやっているか、など聞かれても憂鬱な話題が満載にな る。また、親しい友人たちと会うと、職場環境の話題や初任給などの話しにな り、随分自分が置かれている環境がネガティブなことに気が付く。この就職は 間違ったのかと、後悔の念がよぎる。 ・そこで、はたと、考えだす。連休が終わる前に赴任地に戻らないといけない が、どうも足が向かない。気分が重たい。かくて、ストレスから連休明けの出 社に対して非常に気分の重たいまま、リカバーできていない。こういう状態、 症状兆候を、称して「5月病」と言った。さらに、ここから夏場に向けて気候 が一層辛くなる。6月後半からの梅雨、そして夏場の猛暑。昔は夏場でも、き ちんとネクタイを締めて出勤するのが普通だったので、通勤が非常に苦痛だ。 この連休、夏場を乗り越えると、少し気持ちが落ち着いて現場にも馴染めて、 なんとなくリズムができるのだ。しかし、昨今は、どうもここまで気持ちが持 続できない人が増えてきた。先日のTVのワイドショーで放送していたが、ここ までに退職する新入社員が多い。 ・極端な例は、入社式の翌日に退職。あるいは、1週間ほど経過した時点で退 職というケース。これが増えているそうだ。また、退職の際にも、自分で辞表 を提出するのは流石にはばかれるのか、退職代行業者に委託して辞職する。今 どきの若者事情と割り切ればそれまでだが、多額のコストと時間、エネルギー をかけて採用活動を行ってきた部署にしてみれば、とんでもない事態だ。人事 部に対する現場からの風当たりも強くなる。人数が欠けたことで、至急の補充 の要請もある。そう簡単に人事異動という技は繰り出せないから、しばらく我 慢してくれということになる。辞めた人物より、辞められた現場、同僚社員、 管理職などが非常に気まずくなる。何が悪かったのか、誰がいじめたのかな ど、犯人探しが始まりだす。 <会社からのメッセージが伝わらない> ・先日のTV番組でも放映していたが、今の若者は知らない人からの電話に出る ことは、非常に苦手意識が強い。恐怖を感じるという。職場に配属された新入 社員が、まず洗礼を受けるのが、この電話対応だ。ベテランや古参の社員は、 わざと電話を取らない。教育機会も含めて、新人が電話に出るのは当然という ことだ。しかし、現代の若者は電話で知らない人としゃべることには慣れてい ない。メールやLINEでのやりとり、簡単なメッセージの会話、絵文字、SNSや 動画の投稿などはお手のものだが、こと、電話で会話するとなると、至難の業 だ。特に、初めての人(電話で話す場合、ほとんどが知らない人だろう)と電 話での会話は極力避けたい。家庭でも、あまり会話がないのだろうか。携帯の メッセージならできるが。 ・先輩社員の行動が、ある意味「イジメ」と受け取られると、非常に雰囲気が まずくなる。職場の暗黙の規範で、新入社員がまず電話に出ると決まってお り、そう教えられているなら、それに従わざるを得ないが、それが無言の圧力 と感じられる。そうなると、途端に職場に行きたくない。デスクに座るのも嫌 になる。静かに、黙々と、パソコンの画面を開いて何か仕事をしている様にふ るまう。職場での会話、連絡も、メッセージボード画面に書き込めばいい。職 場の上司、同僚との会話も少ない。まして、週に1回は自宅での在宅業務があ る。ますます、顔を合わして言葉をやり取りする機会が少ない。古くは社員食 堂などもあったようだが、今は各自が勝手にランチを取る。ランチタイムの過 ごし方も、不安な時間になりつつある。 ・誰に、何を聞けばいいか、よくわからないまま、連休を迎えた。就職活動は 一生懸命行って、とにかく内定を取り付けて、今の会社に就職した。悪くはな いと思ったが、どうも配属された部署の空気に馴染めない。誰にも相談、悩み を聞いてもらえないまま、連休を迎え、実家や友人に会って、今の会社があっ ていないのではないかと、密かに悩みだした。こういう時に、信頼できる先輩 などがいるといいのだが、必ずしもそういう人が身近にいるとは限らない。ま して、距離が遠く、長い間会っていない人にいきなりそういう電話もかけにく い。メールやLINEで現在の心境を書くとなると気が重たい。おおよそ、入社後 1か月での退職というケースは、このような場合だろう。まだ、会社の、企業 の本当の中味を見ていない段階だ。 <新しい生活リズムに適応できない> ・入社後の研修期間中に退職する新入社員もいる。その研修が古色蒼然とし て、現代の若者の気分、気質に全然マッチしていないケースも多い。成岡が製 造業に就職したときは、連休までの約1か月は国内事業所の見学と事業内容の 説明で、半分旅行気分の物見遊山だった。連休前に配属先を言い渡されて、連 休期間中は京都の実家に戻り、連休明けの赴任のための準備に充てた。出版社 の人事責任者をしていたときは、新入社員の研修を担当し、集合研修で研修施 設に張り付いていた。この期間の過ごし方で、その後のその企業に対するイ メージが変わる。非常に気を遣って、休みの日曜日はリクリエーションと称し て大阪城公園に花見に出かけた。また、ソフトボール大会なども催した。夜は 歓迎会など、とにかく親しくなることに注力した。 ・この期間に、古いスタイルの研修などを行うと、嫌気がさして退職するケー スもある。一度、集合研修期間に営業の厳しい研修メニューを行ったら、ある 新入社員が夜に研修施設を抜け出して、京都の実家に帰ってしまう事件が起 こった。翌日、その実家へ引き取りに出向いたら、もう戻る気はないという。 母親とも面談したが、本人の意思を尊重したいと言う。ここはいったん冷却期 間を置かないといけないだろうと、その場は諦めて戻ったが、研修施設に帰っ て残った新入社員への説明に窮した。とりあえず体調不良で誤魔化したが、そ の後、この社員は結局戻っては来たが、営業部門から他部署に配置替えした。 同僚社員からブーイングも起こったが、致し方ない。何が悪かったのか、研修 内容が厳しすぎたのか、いまだに腑に落ちない。 ・研修期間中も、各自の行動、様子などには注意を払っているが、それでも人 数が多いと完全には目が行き届かない。特に、自由時間、食事の後、就寝前、 朝の起床後などの態度、状態はウォッチしておかないといけない。変わった様 子はないか、顔色はどうか、元気はあるか。急に、学生生活から社会人生活へ のリズムの切り替えは難しい。特に、大学生の場合、卒業前の学生生活はきち んとした時間、生活リズムで過ごしていない場合が多い。もう就職も決まっ て、卒業が迫ってくると、飲み会、旅行など、勉学より遊びの時間が長くな り、それでなくても生活が乱れている。それを、急に4月になったから、社会 人になったから、切り替えるといっても非常に難しい。3月くらいから徐々に 慣らしていく努力が必要だろう。 <新入社員は自分を写す鏡> ・つまるところ、入社後短期間で退職するというのは、入社前のイメージとあ まりにギャップが大きいことが原因だ。社会人になる直前は、誰しも不安にな るだろう。新しい職場環境に馴染めるだろうか、仕事を覚えられるだろうか、 などなど不安と悩みは尽きない。しかし、そういう不安より、職場での人間関 係に嫌気がさして退職するというのがほとんどだ。つまり、職場で孤立した り、先輩からの一言で傷ついたり、それを誰にも聞いてもらえなくて悩んだ り。独身寮などに入寮していると、同期生や年齢の違わない先輩がいるので、 安心だ。自宅から通勤できる人も、家族が周囲にいるから緩和されるだろう。 問題は、下宿で一人暮らし、しかも地方から出てきて環境にも慣れない、友人 も周囲にいない、そういう環境で孤独を感じている人が危ない。 ・企業のホームページや社長の訓示で、崇高な理念や社会的な価値、活動を積 極的に推進しているというメッセージと、いざ、実際の現場に入ってみると、 それとは真逆な実態に直面する。じつは、その現実は断片的な一過性の部分も 多いが、それがこの会社のすべてだと感じてしまう。企業に勤めるのは、ここ が初めてであり、そういうものだと思えないのだから致し方ない。つまり、発 信する側と受け取る側との非対称性が激しい。既存の社員は、経験から、まあ こんなものだと軽く受け流すこともできる。しかし、新入社員にとっては人生 の一大事になる。これを解消するには、新入社員と近い年代、世代の先輩社員 をメンター的な存在に張り付けて、バックアップすることが大事だろう。数年 前に入社した同じ境遇の先輩社員のアドバイスは心強い。 ・孤立させてはいけない。しかし、あまりにかまい過ぎるのもよくない。この バランス、塩梅(あんばい)が大事なのだ。これはある程度経験を積まないと 分からない。毎年、この課題、悩みで苦労した人事部門の方なら、わかるはず だ。今のZ世代、アルファ世代の若い人は個性的だ。我々が社会に出た時代と は様変わりしている。彼ら、彼女らから教えられることも多い。ある場面で は、彼らの方が進んでいる。そう認識して、溝を埋めたり、距離を近くしたり することを続けることだ。個性的ということは、独りずつが際立つということ だ。同じ切り口で対応すると失敗する。上から目線の物言いもいけない。かと いって、あまりにへりくだるのもダメ。毅然と対応するときは、毅然と対応す る。絶対的な正解はない。自分自身が写る鏡だと思えばいい。