**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第1137回配信分2026年02月09日発行 どうして日本企業の活力が削がれたのか 〜国が過剰に民間に介入するのがひとつの原因か〜 **************************************************** <はじめに> ・2026年1月22日中国人民日報海外版は、日本のメディアが信用調査会社の統 計を基に日本企業の倒産件数が4年連続で増加したと報じたことを受け、「日 本企業が倒産の寒波に襲われたのはなぜか?」と題し、専門家の意見を紹介し た。統計によると、2025年の日本企業の倒産件数は1万社を超え、前年同期比 2.9%増を記録した。倒産件数の増加はコロナ明けの2022年から続いており、 1万件を超えたのも2年連続。リーマンショックで傷んだ2013年以来の最高水 準に達した。記事は専門家による三つの視点からの意見を紹介した。一つ目の 視点は「日本企業が直面する内外からの圧力について」、二つ目は「経済構造 の矛盾について」、三つ目は「高まり続ける不確実性について」。(以下WEB サイトの記事一部引用) ・1人目の専門家である外交学院国際関係研究所の周永生(ジョウ・ヨンショ ン)教授は、「自動車や家電といった伝統的に優位だった産業や、新エネル ギー車などを含む新興分野での競争力の低下や発展の遅れにより、世界的に影 響力のある企業を育成できず、経済成長をけん引するイノベーションが不足し ている。日本政府の産業支援は的確な対象設定を欠き、中小企業への効果は限 定的で、逆に国内のインフレを押し上げ、経済の脆弱性を高めている。技術革 新力と市場対応力を向上させない限り、日本企業が抱える生産性とイノベー ションの停滞という問題を根本的に解決することはできず、持続的な発展は難 しい。さらに、高市首相の発言は日中の経済関係に深刻な影響を及ぼしてい る。今後、日本企業の経営難は深刻化する」。 ・2人目の専門家である中国社会科学院日本研究所の李清如(リー・チン ルー)研究員は、「日本企業の倒産増は、米国の関税や円相場の変動、国内の インフレと労働力不足、物価高と価格転嫁困難のジレンマ、日中関係の緊張な ど、内的要因と外的要因が複雑に絡み合った結果、耐性の弱い中小企業が大き なダメージを受け、存続に関わるさまざまな問題をもたらしている。一部の企 業にとっては、共同受注の減少や市場拡大機会の縮小にもつながっている。や がては日本経済への信頼感を弱め、結果として個人消費や企業投資が抑制さ れ、経済成長の勢いをさらに弱めることになるだろう」と指摘した。海外から の指摘ではあるが、問題点を的確についている。当たらずとも遠からじで、核 心を突いた内容だ。 <日本の製造業の沈滞が始まった> ・3つ目の高まり続ける不確実性に関する専門家の論評はなかったが、これは 世界情勢の流動性が最近一気に高まっているからだろう。トランプ米国大統領 の言動で、世界情勢が時々刻々大きく変動する。関税、紛争調停、領土問題、 国連機構からの脱退など、振り回されること、この上ない。とうとう同盟国の NATO有力国からもブーイングの嵐が吹き荒れている。11月の中間選挙を控え て、ヒートアップはさらに高まるか。まだ、3年間トランプ政権は続くので、 悩みのタネは尽きない。国際情勢の流動性が高まると、多くの方面に深刻な影 響を及ぼす。特に、わが日本国は極めて特殊な環境だ。原材料の大半と食料の 半分近くを輸入している。海外との物流のほとんどは海上輸送だ。海に囲まれ ているので、緊張が高まると影響は深刻だ。 ・そのような日本国の強みは、過去には製造業で付加価値の高い製品を作って いたことだ。海外から原材料を輸入し、加工して製品にして輸出して稼ぐビジ ネスモデルだ。昭和40年代、50年代は繊維産業で日米貿易摩擦が激しく起こっ た。それが落ち着いたと思ったら、自動車で同様の日米貿易摩擦が起こった。 繊維製品然り、自動車然り、次いで家電製品然り。日本の製品の品質は非常に 高く、付加価値があり、他国の製品を寄せ付けなかった。日本人の職人気質に 基づいた匠の技が冴えわたった。為替レートも影響し、世界各国との貿易で日 本は外貨を稼ぎまくった。稼いだ外貨でニューヨークの高層ビルを買うことが できた。日本のビジネスモデルは世界中の手本となった。それを支えたのは、 中小企業の高い技術レベルだった。 ・ところが、1995年以降マイクロソフトのWindowsがリリースされ、インター ネットという化け物が闊歩する時代になり、WEBサイトという情報共有が一気 に進み、職人技の出る幕が急激に狭まった。NETやデジタル技術を使えば、誰 もが、どこでも、簡単に付加価値の高いモノづくりができるような世の中に なった。工業製品を製造するプロセスも自動化され、FA化が急速に進み、後進 国でも付加価値の高い製品が製造できるようになった。労働コストの高くなっ た日本で、モノ造りが徐々に海外へ移転することが始まった。成岡が製造業で 働いた1970年から80年代にかけて隆盛だった製造業は、その後多くは海外に移 転した。成岡が在籍した化学繊維製造工場も東南アジアに移転した。その事業 所では、現在炭素繊維を製造している。 <政府はカネを出してもクチは出さない> ・この間、政策も迷走した。高度経済成長時代は、やることが分かりやすかっ た。いい、悪いは別にして、方向が決まっていた。ところがバブルがはじけて から、日本国の方針が迷走し始めた。ひどい時期には、毎年ときの首相が変わ り、諸外国からバカにされた。朝に挨拶したら、夕方に人が変わっていたと揶 揄された。1年もたず、政権がコロコロ変わった。消費税が導入され、金利の 操作がうまくいかなかった。経済に音痴の首相が続いた。長い低迷の時代が続 き、一時期世界第2位になったGNPは伸びが止まり、いまや当時の面影はな い。国民一人当たりGNPは世界第40位前後まで落ち込むと予想されている。こ れはいかんとアベノミクスなる大盤振る舞いの資金投下が行われ、為替レート が一気に円高から円安に振れた。 ・物価高の元凶は円安にある。資産価値が円安で目減りし、インバウンド観光 客は喜んでいるが、海外から日本に優秀な人材が来なくなり、輸入する原材 料、資材も高騰した。この間、公金の無駄遣いも目に余る状態だった。政府が 投資した事業はほとんどが失敗に終わった。半導体、液晶その他枚挙にいとま ない。霞が関の頭のいい官僚が作文した投資案件は、そのほとんどがドブにカ ネを捨てたことになった。事業が分からない政府が、カネを出したことで口を 出すからだ。事業は民間に任せたらいい。カネを出したから運営に口を出すか ら迷走する。投下資金の上限を提示し、期限と期待値を公表する。あとは民間 に任せればいい。 ・官民ファンドとか産官学連携とか、とかく賢い人は理屈で考える傾向が強 い。事業は人が行うものだ。JALの再生を稲盛さんが成し遂げたように、素晴 らしい経営者はたくさんいる。そういう人をトップに据えて、カネは出しても 口は出さない。支援はしても事業運営に直接口は出さない。結果を冷静に分析 し、見通しがあればさらにサポートし、見通しがないと思えば、きっぱりやめ ないといけない。この「止める」ということをせずに、ずるずると効果がない 事業を続けているから支出が減らない。民間は、事業の入れ替え、ポートフォ リオを常時検討し、時代と共に価値が棄損した事業をスクラップアンドビルド している。経営者は、その決断を行い、結果に対して責任をもつ。官僚が、政 治家がやる事業は責任が曖昧だ。 <時間はあまりない> ・限られた資金を、もっと集中的に効果的に使わないといけない。収支がとれ ていない、借金に依存している体質を早く転換しないといけない。選挙のたび に、耳障りの言い公約をかかげ、その後効果的に実行できたためしがない。資 源が乏しい国だから、円安は国力を棄損する。せめて120円くらいの水準にし ないと、国がもたない。人口がどんどん減少し、自殺者が増加し、海外から人 が入ってこないと国力が維持できない。移民なのかは別にして、外国人と共生 できる社会にしないといけない。日本語教育、社会保障、生活環境整備などに 資金を投下しないといけない。海外の人が増えて、共生できる社会を作らない と、日本人だけでは国力が維持できない。50年後には、東洋で昔栄えた国だっ たという不名誉なレッテルを張られるだろう。 ・規制の緩和をもっと進めることも重要だ。無制限な緩和はダメだが、一定の 制限の下で現状の無意味とも思える規制、官庁の縄張り、省庁間の縦割りなど を緩和し、解除し、大幅に認める。許認可の権限もどんどん民間に移す。いい ものは残り、悪いものは駆逐される。良貨が悪貨を駆逐する。規制を緩和する と、いま、その規制で儲けている人たちが反対する。都合が悪くなる規制緩和 には反対する。政府与党とべったりだから、規制緩和が進まない。利権団体の 後押しで議員になり、政府官僚のOBが議員になり、官庁との癒着が起こる。意 味のない、昭和時代の遺物のような規制が、いまだに多く残っている。全部詳 しくは知らないが、この令和のDX時代に、錯誤とも思える規制がまかり通って いる。選挙の公約には、それが全くなかった。 ・大衆の文化、風土も「長いものに巻かれよ」精神が横行している。お上の言 うことに逆らってはいけないという士農工商身分制度のなごりだろうか。若い 闊達な人材が出ても、年寄りがよってたかって潰す。海外の政権トップの若返 りは際立っている。女性の首相も多い。ようやく日本でも、女性トップの組織 が増えてきたが、まだ物珍しい雰囲気がありありだ。円安を容認し、政府投資 が失敗する中で、今後人口減少が待ったなしの社会で、どうやって活力を取り 戻すのか。革命が起こる素地は全くないから、徐々に改善、改革を進めるしか ないか。選挙がそのいい機会だが、なかなか大きな変革は起こらない。3歩進 んで2歩下がるというイメージだ。果たしてこれで間に合うか。2040年に生産 労働人口が2割減ると言われている。時間はあまりない。