**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第1134回配信分2026年01月19日発行 「やりがい」が明確だと疲れない 〜自分自身の充電と放電のバランスをマネジメントする〜 **************************************************** <はじめに> ・高校の後輩で東京において企業に勤めている30代の若い方が、この4月に地 元京都に戻って起業するという。昨年秋に、某氏からの紹介で初めてお目にか かって、その動機やいきさつをお伺いした。起業して、事業を興し、継続する ことは大変なことだ。自分でも経験して、実際にそう思う。苦労は多いだろう が、覚悟があるなら続くだろう。何より、自分自身がやりたい、遂げたいとい う使命感があれば、だ。周囲から勧められて始めるのではない。また、単純な 金儲けでもない。自分がやりたいことなら、寝食忘れて没頭するだろう。休み がどうした、勤務時間がどうだ、などという些末なことは論外だ。フィジカル の休養は必要だろうが、メンタルの休養は当分必要ないか。常時、モチベー ションは高いはずだ。 ・逆に、いま、業績が芳しくない企業の代表者にも、久しぶりにお会いした。 コロナ明け業績が回復せず、いろいろと新しいことに手を出したが、ほとんど 失敗。焦りが焦りを呼んで、業績は急降下。最盛期の3分の1くらいの売上に 落ち込み、ここ数年は赤字の連続。それでも、コロナ融資やその後金融機関が 運転資金を融資してくれたので、何とか生き延びている。気が付けば、売上の 2倍近くの借入になっていた。返済ができないので、10月に元金の返済ストッ プを申し込んだ。承諾してくれたが、今後の資金繰り予想を出してくれと言わ れて困っている。金策で走り回り、本業に関わる時間はほとんどない。経理を 担当する奥さんも、資金繰りに追い回されている。休みも、おちおち休んでい られない。 ・少し極端なケースを揚げたかもしれないが、前者の場合、休養は必要ないだ ろう。とにかく、気持ちは高揚し、前向きに走るだけだ。モチベーションのポ テンシャルは高く、周囲の雑音も耳に入らないだろう。当分、休養、充電とい うキーワードとは無縁だ。後者の場合休養は必要だが、ここまで業績が悪化す ると、休養だけではリカバーしないはすだ。思い切って大胆な施策を打たない と、企業存続の危機に瀕することになる。その勇気があるか、覚悟ができる か。がけっぷちで踏ん張るという気持ちはわかるが、それが傷口を拡げない か。出血がさらに酷くならないか。あまりに傷口が拡がると、輸血しても出る ほうが多いので、出血死は免れない。休養も充電も、関係ない。いくら休んで も改善しない。 <モチベーションが高いと疲れない> ・休養日に休んでも、なぜか休養日明けにモチベーションが上がらないという 話しをよく聞く。一時期、サザエさん症候群という病気?が流行ったことがあ る。日曜日の18時くらいに始まるTVのサザエさんというアニメ番組の時間にな ると、月曜日が目前に迫ってくる意識が高まり、気分が憂鬱になる。極端な場 合、出社拒否になり、ズル休みにつながる。学校で言えば、登校拒否になる。 うつ病的になり、これが数日続くと重症だ。休みの日に充電したつもりだが、 一向に充電されていない。バッテリーはかなり使い切ると、充電に時間もかか るし、充電効率が悪くなる。時間をかけて充電しても、バッテリー自体が消耗 していると、充電できない。日常活動で放電しっぱなしなのだ。日常の生き方 が放電型になっている。 ・起業して数年間は、前を向いて走るしかない。起業前に、いろいろと考えて いた事業のイメージで、その通り進んだ事案は2割もなかった。甘いと言えば 甘かったのだろうが、やってみれば現実はそういうことだと感じた。お題目の きれいごとでは片付かないのが現実だ。しかし、やる気は満々で何とかして障 害を乗り越えようという高揚感は強い。時間の経つのも忘れ、寝る時間も惜し い。食事も満足に取れないことも多いが、全く気にならない。疲れているのだ ろうが、爆睡できる。翌朝すかっと目が覚める。眠りが深いので、時間は短い がリカバーできる。これで20年くらい突っ走った。良かったのか、悪かったの かわからないが、さしたる病気もしなかった。テンションが高いので免疫力が 上がっていたのだろう。 ・サラリーマンで企業に勤務しているのではないから、タイムスケジュールは 自分で決められる。無理に仕事を突っ込むこともあれば、午前中がぽっかり空 くこともある。しかし、毎日のリズムは崩さないように注意していた。寝る時 刻はばらばらだが、起床時刻だけは同じようにした。何曜日になにがある、月 例の行事も日程をほぼ決めた。土曜日、日曜日は運動タイムをなるべく多くと り、どちらかの夕方は銭湯に行って、サウナで汗を流した。できれば、その前 に1時間ほどランニングした。食事に気を配り、食べる事、出すこと、寝るこ となど、基本を崩さなかった。仕事は濃密で緊張感があった。目的が明確で、 ぶれなかった。無償の仕事も山ほどやった。人との付き合いも多かった。しか し、不思議に疲れたという感じはなかった。 <やりがいが明確か> ・要は「やりがい」の問題だろう。「やりがい」さえ明確であれば、働き方、 休みの取り方も、自ずと決まってくる。「やりがい」はどうやって決めるの か。それは各自の志しと想いだろう。何を実現したいのか、何を目的に生きる のか。それと、自分がやる仕事が一致しているのか。完全に一致はできないま でも、少しでも近づける方法はないか。ときに、その志しと違う方向に進むこ ともある。その時は、外から意見をもらうようにした。少し立ち止まって、い ま踊り場だと自分自身に言い聞かせ、一歩外に出て外から自分を眺めるように した。立ち位置を変えると、見える景色が変わってくる。表から見るのと、裏 から覗くのでは、まるで見えるものが違う。ゴルフのグリーンで、芝目を逆か ら見るのと同じだ。 ・仕事の「やりがい」がはっきり意識されていると、休みの取り方、過ごし方 も変わってくる。日常の活動も、変わってくる。トップの日常が変わってくる と、組織のメンバーの意識も変わるだろう。休みが休みにならず、休養が休養 にならないのは、この「やりがい」が意識されず、日常において「やりがい」 が感じられないのだ。さらに、「やりがい」はその人の「生きがい」につなが る。回り道も、納得しての回り道なら意味がある。前日お目にかかった方は、 海外協力隊で2年間、アフリカの某国でインフラ整備の仕事に従事した。帰国 して、再就職は大変だったが、その2年間のアフリカの活動で意識が変わった という。2年間のブランクを空けるには勇気が要り、家族の反対もあったが、 その後の人生を考えて敢えて回り道を選択した。 ・「やりがい」が見つかり、明確に意識できるようになると、日常の行動が変 わってくる。集中するときは徹底的に集中するし、リラックスするときははっ きり意識してリラックスする。これは、何も怠けているのではない。放電と充 電、テイクとギブ、入力と出力のバランスをうまくとることが大事だ。この比 重は人によって大きく異なるはずだ。50対50くらいにしないと難しい人もあれ ば、90対10で済むこともある。月度、時期、季節によっても大きく異なるだろ う。年度単位で決めておくのもいい。以前、弊社では5年ごとに感謝の集いと いうイベントを開催していた。毎年大文字の日には左大文字に近い実家を開放 して、送り火鑑賞会を行った。大勢の方にお越しいただき、おもてなしで忙し かった。 <やりがいは生きがいにつながる> ・何が「やりがい」であり、それがどう「生きがい」につながるかは、人に よって大いに違いがある。過去の経験から生まれるものもあれば、遠くの理想 から出発する場合もある。父親の事業経営を見て、それを反面教師にする場合 もある。自分自身を振り返れば、高度経済成長時期からバブル経済の時代は、 規模を追いかけた。売上、店舗数、社員数、事業規模など、掲げた目標数字を 達成するのが「やりがい」だった。それこそ、寝食忘れて、事業規模の拡大に 奔走した。古い本社から新しいビルを買って移転した。毎年定期新卒大卒社員 を10名前後採用した。毎年の事業計画は前年対比20%増しの数字が躍った。社 員数は、転職当時40名だったのが、10年も経たないうちに300名になった。東 京水道橋に一棟借りの東京支店ができた。 ・結局事業が継続できなかった。何を間違ったのか、何が悪かったのか。わ かったのは、破綻して数年後だった。事業目的が規模、数字、売上、利益だけ だった。事業の「芯」になる考え方がなかった。軸は都度ぶれ、新しい試みは 失敗の連続になり、赤字の補填がさらなる赤字を生み、「やりがい」というき れいごとを唱えている時間はなかった。そうなると、完全に負のスパイラルに 落ち込む。資金供給がストップすれば気が付くのだが、悪いことに金融機関も 破綻されては困るので、ニューマネーを供給する。結果的にドブに捨てたのと 同じだが、その時点では点滴、輸血、人工呼吸、胃ろうと、ありとあらゆる延 命措置を施す。そして、しばし経過したあとご臨終を迎える。懸命な延命措置 が高額医療費の無駄遣いになる。 ・最初から「やりがい」は何かを突き詰めて考えていなかった。人口が増え、 事業規模が拡大する時代は、特に意識しなくても良かった。しかし、時代は変 わった。事業の社会的な存在価値は何か、自身の「いきがい」は何かが、明確 にならないと日常は放電の連続になり、休養が充電にならず、いつもストレス が蓄積されていく。タバコを吸わないでも肺がんになる。免疫力が低下する と、体内の潜んでいたウィルスが暴れだす。帯状疱疹などはその典型だ。コロ ナやインフルエンザも、その類か。休養を有効な充電にするには、意識した日 常が必要だ。「いきがい」を意識した日常がうまくマネジメントできれば、休 養は有効な充電になり、日常の放電もコントロールできる。人生とは「いきが い」を見つける終わりのない旅か。